ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(1813年5月22日 ~ 1883年2月13日)はドイツを代表する作曲家、指揮者、音楽理論家、理論家・ポレミッキストであり、特に作出したオペラは素晴らしく革新的な演劇手法の探求などを通じて、その後のオペラの方向性をも変える重要な役割を担いました。
ワーグナーは舞台作品の台本と作曲の両方に携わり、より複雑で豊なオーケストレーションやハーモニーを作ることができる数少ない人物でした。
また、極端な半音階や無調性など、ワーグナーの音楽語法はその後のヨーロッパのクラシック音楽の発展を予見させるものでした。
音楽、映像、詩、演劇など、芸術のあらゆる側面を統合する「総合芸術」という新しい概念によりオペラに革命を起こし、その音楽的な表現やスタイルはその後のクラシック音楽の発展にも大きな影響を与えました。
ワーグナーがいなければ19世紀後半から20世紀の多くの作曲家達(R・シュトラウス、マーラー、シェーンベルク等)の音楽性も現在認識しているものとは異なったものとなっていたはずです。
ワーグナーの成熟したオペラには、ライトモチーフ(楽曲中などで特定の人物や場所、ストーリーなどに関連した音楽的フレーズ、旋律的な発想のこと)を用いた音楽構造という概念を導入しました。
ライトモチーフの音楽的構造の拡大により世界中で音楽は進化し、ワーグナーの域を超え、時代をも超えて現代音楽やポピュラー音楽にまで影響を与えました。
ワーグナーの四半世紀にわたる代表作であり、ドイツ芸術の至高の作品とも言われる『ニーベルングの指環』は4部作(前夜祭「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」)で構成されており、16時間もの音楽、演劇を4日間にわたって上演し、比類なき壮大なスケールで行われる最高レベルのオペラとなっています。
ただワーグナーの音楽家としての仕事とはかけ離れた「反ユダヤ主義」の考え方によって、クラシック界の中で、多くの物議を醸しだした最も問題が多い作曲家とも言われています。
ワーグナーの解説動画(ワーグナーの借金、夜逃げ、刑務所、亡命と波乱万丈な人生、おすすめの名曲、そして音楽の魅力をたっぷり紹介!!)
ワーグナーの名曲・代表曲
楽劇 | ・4部作「ニーベルングの指環」 ・前夜祭「ラインの黄金」 ・第1夜「ワルキューレ」 ・第2夜「ジークフリート」 ・第3夜「神々の黄昏」 ・舞台神聖祝祭劇「パルジファル」 ・「トリスタンとイゾルデ」 ・「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 |
オペラ | ・ローエングリン ・タンホイザー ・さまよえるオランダ人 ・リエンツィ |
交響曲 | 交響曲 ハ長調 |
管弦楽曲 | ・ジークフリート牧歌 ・ファウスト序曲 ・ロメオとジュリエット WWV.98 |
歌曲 | ・ヴェーゼンドンク歌曲集 |
ここでご紹介するワーグナーの名曲10選はおこがましくも管理人の独断と偏見によりセレクトしています。ご理解の上、お楽しみください。
※順不同
ワーグナーの名曲10選
ワーグナーの名曲1 《トリスタンとイゾルデ》
Tristan und Isolde.
「トリスタンとイゾルデ」は12世紀のゴットフリート・フォン・シュトラスブルクのロマンス作品『トリスタン物語(トリスタンとイゾルト)』を題材にして、リヒャルト・ワーグナーが作曲した3幕のオペラです。
愛と死をテーマにした4時間もの大作で、ワーグナーが音楽で物語を具現化させる壮大な作品に完成させました。
ワーグナーの中でも特に人気のある作品の一つで、崇高な音楽を通して語られる愛と死のロマンチックな悲劇です。
前奏曲の冒頭、有名な「トリスタン和音」からの大きな流れを持った展開は、オペラの世界を変えるほどの重要なレパートリーとなりました。
ワーグナーの名曲2 ニュルンベルクのマイスタージンガー
The Mastersingers of Nuremberg
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、リヒャルト・ワーグナーが考案した独自の物語で、
16世紀ドイツの伝統・民謡へのオマージュ作品です。
他のオペラとは異なり、伝説や神話、空想の世界ではなく歴史的に明確な時代と場所を舞台にしたワーグナー唯一の喜歌劇です。
あらすじ
遠方から詩人に憧れてニュルンベルクに来たヴァルターとエファは互いに惹かれあっていますが、16世紀のマイスターたちのコミュニティで、歌合戦の勝者はエファに求婚できる権利を与えることになりました。
新参者のヴァルターには出場権利がありませんが、靴職人であり名人でもあるハンス・ザックスの擁護などにより歌合戦の会場で急遽歌う権利が与えられ、そこで見事優勝することができます。
それによりヴァルターとエファは結ばれ、ザックスの徳を讃えてハッピーエンドで幕が下ります。
ワーグナーの名曲3 前夜祭「ラインの黄金」
The Rheingold
「ラインの黄金」WWV.86Aは、リヒャルト・ワーグナーが作曲した壮大な音楽劇「ニーベルングの指環」を構成する4部作のうちの最初の作品で「序夜」になります。
あらすじ
ラインの黄金は万能の力を持っており、指環にしてはめれば世界をも支配できるが黄金を手にするには愛をすてなければならない。
愛を捨てることは難しいため、黄金が持ち出されることはないといいます。
ある時ラインの黄金の宝を守る3人の娘たちに近づこうとした地底人のアルベルヒは嘲笑われてしまいますが秘密をしったアルベルヒは愛を捨て、ラインの黄金を持ちだしてしまいます。
ヴォータンはヴァルハルの城を完成する代わりに巨人のファーゾルトとファーフナーに美の女神である妹のフライアを渡す約束をしていました。
巨人たちに約束の変更を求めますが、受け入れてはもらえません。
困ったヴォータンに火の神ローゲが現れ、アルベルヒの黄金がフライアの代わりになるのではないかと助言をし、巨人たちもその代替案に同意します。
ヴォータンとローゲは死の国二ーベルハイムの地下洞窟についた時、アルベルヒが弟のミーメが注文したどんな大きさや形にも変身できる魔法の帽子「ターンヘルム」をかぶり、ミーメを苦しめていました。
アルベルヒは魔法の帽子を自慢しますが、ローゲの知恵により、魔法の帽子によってカエルになったところでヴォータンにつかまり、縛り上げられてしまいます。
山頂に戻ったヴォータンとローゲは、指環や財宝を条件に自由にアルベルヒを自由にすると言います。アルベルヒは解放されますが、自分に指環が戻るまで指輪を持つ者すべてに悩みと妬みと死が降りかかると呪いをかけます。
巨人達が現れ、約束していたアルベルヒの財宝を二人に渡しますが、指環も要求します。
そこに大地の女神が現れ、破滅の呪いがかかった指環を手放すことを忠告し、ヴォータンは巨人に指環も渡すことにします。
巨人たちは指環を奪い合い、ファーフナーはファーゾルトを殺して財宝を奪い去っていきます。
フライアは解放され、フローが虹の橋をかけてヴォータンらと一緒に神々の居城ヴァルハラへ入っていきます。
ワーグナーの名曲4 第1夜「ワルキューレ」
Walküre
『ワルキューレ』WWV86Bは、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』を構成する4つの音楽劇のうち2番目の作品です。
神々の長ヴォータンの息子であるジークムントは戦の最中に嵐にあい、疲れ果ててある家の前で倒れこみます。
そこはジークムントの宿敵であるフンディングの家。
フンディングの妻、ジークリンデはジークムントが幼い時に生き別れた実の妹でしたが、この時は知る由もなく、お互いに惹かれ会ってしまいます。
フンディングが帰還し、ジークムントと身の上話をしているうちに宿敵であることが分かってしまい、翌朝に決闘をすることになります。
ジークリンデは、謎の男(ヴォータン)の話をしました。
その男は家にやってきてトネリコの木に剣を突き刺し、偉大な英雄だけがこれを引き抜くことができると言い去っていきます。
多くの挑戦者は引き抜くことができませんでしたが、ジークムントは二人が兄妹であることを知りますがジークリンデへの思いによって引き抜くことができました。
その剣をノートゥング(必要なもの)と名付け、愛と復讐を誓います。
ヴォータンはワルキューレ、ブリュンヒルデにジークムントがフンディングに勝利するように命じますが、不倫や兄弟愛を許さない妻のフリッカが現れ、ジークムントではなくフンディングが勝利するようにヴォータンは命じます。
しかし、ブリュンヒルデはジークリンデに対するジークムントの強い思いに感動し、ヴォータンの命令に背くことを決心します。
ジークムントとフンディングとの決闘になりますが、ジークムントが勝利となる瞬間にヴォータンが現れてジークムントの剣を砕き、殺してしまいます。
ブリュンヒルデは砕けてしまった剣の破片を持ち、ジークリンデを連れて逃げます。
ヴォータンは自分の命令に背いたブリュンヒルデに怒り、追いかけます。
ジークリンデは死を望みますが、ジークリンデのお腹の中にジークムントとの子どもが宿っていることをブリュンヒルデは告げ、ジークフリートと名付けます。
ブリュンヒルデは剣の破片をジークリンデに渡し、子供のために生きなければならないと宣言して彼女を森に送り出します。
そこへヴォータンが怒りに燃えてやって来ますが、ブリュンヒルデが自分のために行動をしたことを知り、許そうとしますが罪を許すことはできないと告げます。
ブリュンヒルデは神の力をはく奪され人間となり、人間の英雄が救うまで岩山の上で魔法の眠りにより眠らさせてしまいます。
ヴォータンが立ち去り、幕がおります。
ワーグナーの名曲5 第2夜「ジークフリート」
Siegfried
楽劇「ジークフリート」はワーグナーによる『ニーベルングの指輪』を構成する4つの音楽劇のうち3番目の作品です。
あらすじ
森の中の洞窟で鍛冶が得意なミーメはジークフリートのために剣を鍛えていますが、ジークフリートは簡単に剣をへし折り、もっと強い剣を要求します
ミーメが実の親ではないといういことに気が付いていたジークフリートは、本当の親が誰なのかをミーメに尋ねます。ミーメはジークフリートを産んで間もなく死んでしまった母のジークリンデを森で見つけたことを話します。
形見である伝説の剣「ノートゥング」の破片を見せると、ジークフリートはミーメにその剣を直してほしいと頼みますが、いくら頑張っても「ノートゥング」の破片で剣を直すことができません。
途方に暮れているミーメの元に見知らぬ男がきます。それは神々の主ヴォータンが人間に化けて放浪者になっているのです。
ミーメと首をかけてなぞかけ競争をしますが、ノートゥングの剣を誰が直すことができるのかと聞かれると、恐怖のあまり諦めてしまいます。
ヴォータンは「この剣を直すことができるのは、恐れを知らぬ者だ。ミーメの首はその者に譲る」と言い、去っていきます。
恐れを知らないジークフリートにミーメは恐れを教えようとしますが、全く理解できません。
宝を守るために竜と化したファーフナーに会えば恐怖を知るだろうと、そこへ連れていき恐怖を教えることを約束します。
いつまで経っても「ノートゥング」を直すことができないミーメに業を煮やしたジークフリートは自ら鍛えなおし、ついに「ノートゥング」を直すことに成功します。
一方、ミーメはジークフリートがドラゴンを倒した後、宝を自分の者にするために毒入りの酒を飲ませようと画策します。
アルベルヒは指環を取り返して世界を支配するため、ファーフナーの洞窟の入り口で隙を窺っています。そこにさすらい人(ヴォータン)が現れます。
アルベルヒは勇者が竜のファーフナーを殺しに来るから、指環と引き換えにそれを止めることを提案しますが、相手にされません。夜が明け、ジークフリートとミーメが到着します。
葦笛で鳥の鳴き声を真似ようとしますが、うまくいきません。
そこで角笛を吹くと竜のファーフナーが眠りから覚め、洞窟から現れ、戦いが始まります。
ジークフリートは「ノートゥング」でファーフナーの心臓に突き刺し、勝利します。
ファーフナーは最後に裏切りに注意しろと告げ、息絶えます。
ジークフリートが竜から剣を抜くとき、手は竜の血で火傷をしてしまったため、口で血をなめました。
その時、突然鳥たちの歌を理解することができるようになります。
鳥たちの歌に従い、ファーフナーの財宝と指環、ターンヘルムを手に入れます。
洞窟の前ではアルベルヒとミーメが財宝を巡り争っていますが、ジークフリートが洞窟から出てくるとアルベルヒは隠れます。
まだ恐怖を知らないとミーメに訴えるジークフリートに、毒入りの酒をミーメは勧めるが、竜の最後の言葉によりミーメの裏切りを理解し、ミーメを倒してしまいます。
小鳥たちは魔法の炎に包まれた岩の上で眠るブリュンヒルデのことを歌います。
ジークフリートはこの女性から恐怖を学ぶことができるかと思い、その地へ向かいます。
さすらい人(ヴォータン)がエルダを呼び出しますが、混乱している様子のエルダは何のアドバイスもできません。神の力が弱くなっているエルダを、ヴォータンは永遠の眠りにつかせます。
岩山にかけつけたジークフリートがヴォータンの前に現れます。
ヴォータンはジークフリートに執拗に問い詰めるので、ジークフリートは不愛想な態度をとっています。怒ったヴォータンはノートゥングを破壊した槍を突き出しますが、ジークフリートは鍛えなおしたノートゥングでその槍を真っ二つにしてしまいます。ヴォータンは冷静に破片を拾い集めた後、去っていきます。
ジークフリートは炎を中を突き進み、ブリュンヒルデの岩の上につきます。
初めは眠っている鎧の人物は男性だと思っていたジークフリートでしたが、鎧を外すとそこには美しい女性でした。
初めて見る女性の姿についに恐怖を憶えます。
ブリュンヒルデに口づけをして魔法の眠りから覚めると、すぐに二人はお互いに心を惹かれあいます。
ワーグナーの名曲6 第3夜「神々の黄昏」
Götterdämmerung
『神々の黄昏』は、リヒャルト・ワーグナーが作曲した楽劇で、舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』四部作の4作目の作品になります。
あらすじ
ワルキューレの岩の上でエルダの娘の3人のノルン達が運命の網を編みながら、世界のこれまでの出来事や行く末について話していますが、突然網は切れ、ノルン達は地中のエルダの元に帰っていきます。
夜が明け、ジークフリートとブリュンヒルデが姿を現します。
ジークフリートは武勲をたてるため山を下りることになり、ブリュンヒルデはジークフリートに保護する呪文をかけます。
ジークフリートは愛の証としてブリュンヒルデにファーフナーから奪った指環を渡し、旅に出ます。
河のほとりのギービヒ家では群ターとグートルーネ、ハーゲンがの栄光を取り戻すため、大胆な計画をたてます。
ハーゲンはグンターの妻にブリュンヒルデをグートルーネの夫にジークフリートを迎えるというものでした。
何も知らないジークフリートがギービヒ家にやってくると、まんまと忘れ薬を飲まされてしまい、ブリュンヒルデを忘れてグートルーネと恋に落ちてしまいます。
グンターはブリュンヒルデを妻に迎えることができれば、グートルーネを嫁にあげても良いと言います。
ブリュンヒルデの元に神々からの使いが来て指環を正当な持ち主に返すことを要求するが、神々の運命よりもジークフリートの愛の方が大切だと断ります。
ジークフリートは「ターンヘルム」を使ってグンターに変装し炎の中を越えていき、ブリュンヒルデに求婚をして更に指環をも奪ってしまいます。ブリュンヒルデの幸せは恐怖と混乱に変わってしまいます。
夜、ハーゲンの夢の中で父のアルベルヒが現れ、指環を奪われた経緯と取り返したいと告げます。ハーゲンは指環を手に入れることを決心します。
夜が明け、ギービヒ家では2組の婚礼の儀式が行われようとしています。
・ジークフリートとグートルーネ
・グンターとブリュンヒルデ
ジークフリートが記憶をなくしていることを知らないブリュンヒルデは、驚き、自分への裏切りを激しく責め立てます。しかも指にはグンターに奪われた指環をはめていることに気付きます。
指環についてグンターとジークフリートに問いただしますが、二人とも潔白を主張します。
頭の中が復讐心と混乱で苦しむブリュンヒルデに、ハーゲンが復讐の手伝いをしたいと近づきます。
ハーゲンは、ジークフリートの弱点をブリュンヒルデに聞きますが、ジークフリートは無敵だが、唯一背中は無敵ではないことを聞き出します。
ハーゲン、ブリュンヒルデ、グンターの3人は指環を奪い、ジークフリートを殺すことを誓います。
3人の計画を知らないジークフリートはハーゲンと狩に出掛けた後の宴会の中、忘れ薬の解毒剤を飲まされ、徐々に記憶が戻ってきます。
記憶を取り戻す中、炎の中を進み、ブリュンヒルデを目覚めさせたことを語りだしたジークフリートの背中をハーゲンは槍で突き刺します。
ジークフリートはブリュンヒルデを想い、彼女の想いを偲びながら息絶えます。
グートルーネは帰ってこないジークフリートを心配しています。
遺体となって戻ってきたジークフリートを見たグートルーネはグンターを疑いますが、ハーゲンが殺したことを告げます。
ハーゲンとグンターは指環のことで争い、ハーゲンがグンターを殺してしまいます。
ハーゲンが指環を取ろうとするとジークフリートが腕を振り上げ、皆を驚かせます。
ラインの乙女たちから全てを聞き理解したブリュンヒルデが登場し、ジークフリートの死に対する神々の罪を糾弾します。
ジークフリートの指から指環を外し、ラインの乙女たちに差し上げると言います。
ブリュンヒルデは遺体の周りに薪を積み、そこに火をつけます。
愛馬グラーネに乗り、炎の中へ飛び込みます。
その時、川が氾濫し、ハーゲンは指環を追いかけて溺れ死んでしまいます。
指環はラインの乙女たちのもとへ戻ります。
遠くには、ヴァルハラと神々が炎に包まれ、その栄華が終焉を迎えます。
ワーグナーの名曲7 舞台神聖祝祭劇「パルジファル」
Parsifal
パルジファル
舞台神聖祝典劇『パルジファル』は、リヒャルト・ワーグナーが1882年に完成させた全3幕の楽劇で、13世紀のドイツ語叙事詩「パーシヴァル」をもとにワーグナー自身が台本を書いています。
あらすじ
中世のスペイン。部隊はモンサルヴァート聖杯騎士団の城に近い森の近くで老騎士グルネマンツと2人の衛兵が目覚めます。
他に騎士たちは、アンフォルタス王の傷を癒すために水浴の用意をしています。
アンフォルタス王は聖槍を邪悪な心を持つクリングゾールに奪われてしまい、脇腹に傷を負ってしまっていたのでした。
その時謎の女性クンドリーが馬にのりやってきます。
アンフォルタス王の傷を治すためにアラビアからの薬草を持ってきたのです。
アンフォルタス王が帰った後、グルネマンツは聖杯と聖槍が手に入るまでの経緯、そしてクリングゾールに聖槍を奪うに至った経緯を話しています。
聖槍を取り戻し、純粋無垢な男を見つけることによってのみアンフォルタス王と騎士団は救われるのです。
老騎士グルネマンツがそう話をしていた時、空から瀕死の白鳥が落ちてきてその白鳥を射た若者(パルジファル)がやってきます。
その若者は世界のこと、自分の名前や素性も答えることができません。
唯一憶えているのは母親の名前(ヘルツェライデ)という母と森で暮らしていることでしたが、グルンネマンズは自分が望んでいた純粋無垢な人間に出会ったのだろうかと思い、パルジファルを城に連れていきます。
騎士たちは城の大広間に集合し、アンフォルタスの父で騎士団の元指揮官であるティトレイは、聖杯の儀式を進めるよう息子に促しますが、傷を負っているアンフォルタスにとっては苦痛にしかなりません。パルジファルはその儀式に興味を示さず呆然としています。
期待とは裏腹に失望したグルンマンズは彼を会場から追い出してしまいます。
パルジファルはその後、聖槍を奪った邪悪な心を持つクリングゾールの城へ向かいます。
クリングゾールはアンフォルタス王の時と同じく魔法によってクンドリーを操り、パルジファルを誘惑させます。
クンドリーはパルジファルの両親のことを話すと誘惑しはじめ、パルジファルへ口づけをします。
その時、パルジファルの情熱と知識が呼び覚まされ、アンフォルタスを救えるのは自分であることを悟ります。
クリングゾールが現れ、パルジファルに向かって聖槍を投げますがパルジファルの頭上で止まってしまいます。その聖槍を掴み、頭上にかざして十字を切るとクリングゾールの城は崩れ落ち、魔法の庭は消滅します。
パルジファルは勝利のうちに旅立ちます。
数年後、聖杯騎士団の城に戻ると年老いたグルネマンツがアンフォルタス王の衰弱を嘆いています。聖金曜日の朝、クンドリーが騎士たちのもとに返ってきました。
そこに謎の男が現れ、祈り始めますが、その男がパルジファルだと分かります。
聖なる儀式によって聖槍を守り抜いたパルジファルは、聖杯騎士団の新たな指導者となります。
その後、クンドリーの贖罪が行われます。
聖堂では聖盃騎士たちが先代王ティトゥレルの葬儀のためアンフォルタス王は聖杯を開帳する役目となりますが、衰弱しているアンフォルタス王はその苦しみに耐え切れず、死を望みます。
そこにパルジファルがグルメマンツともに現れ、聖槍を脇腹の傷にあてるとたちまち傷は癒えます。
パルジファルは聖槍を高くかかげ黄金の祠から聖杯を取り出すと、ますます輝きを増していきます。
赦しを得たクンドリーは床に倒れ、救われたまま息絶えます。
パルジファルは聖杯を振って騎士たちに祝福を与えると、上から鳩が降りてきます。
祈りを捧げる騎士たちと共に聖杯をかざし、祝福を捧げながら幕がおります。
ワーグナーの名曲8 ローエングリン
Lohengrin
ローエングリンWWV75は、リヒャルト・ワーグナーが作曲・作詞した全3幕のロマン派オペラです。
あらすじ
アントウェルペンのスヘルデ河畔ではハインリヒ王がフリードリヒ伯爵になぜブラバント公国が争いと混乱に陥っているのかを説明するよう言います。
王には2人の子ども(エルザとゴットフリート)がいます。
フリードリヒ伯爵は姉のエルザが森に散歩に連れて行った時、弟のゴットフリートを殺したのではないかと疑いをかけます。フリードリヒ伯爵はそこにつけ込み、この国の領地を自分に任せて欲しいと願い出ます。
ハインリヒ王は決闘で決着をつけよと命令します。
エルザは夢で見た神からの遣わされた白鳥の騎士の話をし、その騎士が自分を守り潔白を証明してくれると言います。エルザが祈ると白鳥が引く魔法の船にのり、騎士(ローエングリン)が現れます。
決して騎士の名前や素性を尋ねないことを条件として、エルザのために戦うことを了承します。
ローエングリンはフリードリヒ伯爵との一騎打ちに勝利し、エルザの潔白を証明してみせます。
夜明け前の城の中庭でフリードリヒ伯爵と妻のオルトルート(魔法使い)はエルザとローエングリンに復讐を誓います。
オルトルートはローエングリンの素性を疑い、エルザに近づきます。
エルザとローエングリンは婚礼をあげます。
オルトルートはエルザの好奇心と疑いを利用して、ローエングリンの素性を探るように仕向けます。
その夜、エルザとローエングリンは花嫁の部屋で二人きりで愛を誓い合うが、不安と心配のあまりエルザはローエングリンに禁断の質問をしてしまう。
「あなたはいったい誰で、どこから来たのか」
ローエングリンが答える間もなく、フリードリヒと手下らが乱入してきます。
ローエングリンはフリードリヒらをあっという間に倒してしまいます。
誰からの質問も答えることはないが、エルザの質問にだけは答えなければならないというローエングリンは、エルザの質問に対して、王の御前で答えようと言います。
ローエングリンは王と騎士たち、エルザの前で自分の名前と素性について話します。
「私はモンサルヴァートの聖杯の神殿、聖杯騎士の王パルジファルの息子のローエングリンだ。」
自分の正体を知られた以上、この地を去らなければならないと言い、別れを告げます。
するとまたスヘルデ河畔に白鳥が引く魔法の船が現れます。
ローエングリンが白鳥の鎖を解くと、その白鳥は湖に向かいますが、その後、なんと湖から弟のゴットフリートが現れます。
魔法を破られ、ゴットフリートを見たオルトルートは絶命します。
ローエングリンはゴットフリートをブラバンドの王だと明言し、その場所から去ります。
エルザは悲しみのあまり倒れこみ、ゴットフリートの腕の中で気を失ってしまいます。
ワーグナーの名曲9 タンホイザー
Tannhäuser
タンホイザーはリヒャルト・ワーグナーが作曲した全3幕のオペラです。
あらすじ
中世ドイツのヴァルトブルク城近辺で騎士であり吟遊詩人のタンホイザーは、愛と官能の女神であるヴェーヌスのいるヴェーヌスベルクで官能のひと時を過ごしていますが、快楽を堪能し尽くし、久しぶりに人間界に戻りたいと思うようになります。
タンホイザーはヴェーヌスに賛美を送り、自分を人間界に戻してほしいと願います。
驚いたヴェーヌスは更なる快楽を約束しますが、タンホイザーは地上へ帰してほしいと懇願します。
ヴェーヌスは激しい怒りを見せますが、ついにはタンホイザーを解放します。
いづれ人間に失望し、また戻ってくると信じて。
聖母マリアに祈りを捧げるとヴェーヌスは姿を消し、ヴェーヌスベルクは消えて辺りはヴァルトブルク城の近くの谷にいました。
ローマへ向かう巡礼の行列が通りかかりますが、それはヘルマン伯爵と仲間の騎士たちでした。
再び仲間として迎え入れてくれたのですが、タンホイザーは罪の意識があり一旦断りますが、旧友のヴォルフラムが恋人であったエリーザベトのことを話すと、自分が何をするべきか理解して仲間に加わります。
タンホイザーのエリーザベトは再会し、喜び合い、愛を讃えあいます。
2人の感動的な再会を見たヴォルフラムは自分のエリーザベトへの想いが絶望的だと悟ります。
ヴァルトブルク城の大広間、歌の殿堂で歌合戦が行われます。
ヘルマン大公は歌合戦の主題は「愛」であると宣言し、勝者にはエリーザベトから褒美をもらえるということになりました。
ヴォルフラムは愛の心からの歌から始まります。
次々と愛の歌が歌いあげられ、タンホイザーも負けじとヴェーヌス讃歌を歌い上げると、タンホイザーが今までどこにいたのかを皆は知ってしまいます。
禁断の地にいたことを知った騎士や貴婦人、領主らはタンホイザーを追放しようとしますが、エリーザベトは償いの機会をと懇願し、ヘルマン大公はタンホイザーが罪を償い許しを請うためにローマ教皇のもとへ行くことを命じます。
数か月後、ヴォルフラムは谷の祠でエリーザベトが祈りを捧げているところを見つけます。
ローマから戻ってくる巡礼の一団が通りかかりますが、その中にタンホイザーの姿を見つけることはできません。
悲しみのエリーザベトは自分の魂が天に召されるよう聖母マリアに祈り、ヴォルフラムのところから去ります。
夜が深まった頃、一人の巡礼者がヴォルフラムのところに近づいてきます。
ぼろぼろに疲れ果てたタンホイザーはローマに向かう途中、敬虔な懺悔をしてきましたが、ローマ教皇から赦されることはありませんでした。
希望を失ったタンホイザーはヴェーヌスのところに戻ることを望んでいますが、ヴォルフラムがエリーザベトの名を口にすると、タンホイザーは再び正気を取り戻します。
その時、エリザベートの葬儀の行列が近づいてきます。
タンホイザーはエリザベートの亡骸が入っている棺桶に倒れこみ、天に召されます。
ワーグナーの名曲10 さまよえるオランダ人
Der Fliegende Holländer
「さまよえるオランダ人」は、リヒャルト・ワーグナーが作曲したオペラです。
あらすじ
19世紀、激しい嵐で荒れているノルウェー沿岸の海で、ダーランドの船は乗組員を休ませるために船を入り江によせ嵐が静まるのを待つことにします。
すると幽霊のような怪しい船がダーランドの船の隣にきて錨を下ろします。
その船から「オランダ人」と名乗る男が現れます。
「オランダ人は悪魔に呪われてしまっており、7年に一度だけ船を降りることが許されています。その時に「永遠の愛」を誓いあえる女性に出会い、誠実であれば不死による永遠の彷徨いから解放され呪いを解くことができますが、もしそうでなければ審判の日までまた彷徨い続けなければなりません。」
ダーランドは「オランダ人」から一晩の宿を頼まれます。
金銀宝石を差出し、ダーランドの娘ゼンタを妻にしたいと願い出ます。
呪われているとは知らず、「オランダ人」を金持ちの人だと思っているダーランドは、その願を受け入れてしまいます。
ゼンタは「さまよえるオランダ人の伝説」に傾倒しており、自分こそがオランダ人を救う聖なる女性だと疑っていません。そこに現れた「オランダ人」を運命だと信じ、永遠の愛を誓います。
嵐がおさまり、2隻の船はダーランドの故郷へ向かいます。
港では村人たちが船の帰還を祝います。
「オランダ人」の船から降りてきた船員達は嘲笑うかのように運命を嘆く歌を詠唱します。
不気味に感じた村人たちは逃げていきます。
ゼンタには漁師のエリックという恋人がいましたが、ゼンタの裏切りに酷く避難を浴びせます。
オランダ人は望んでいた希望が叶わなかったと嘆き、別れを告げて船に戻ろうとします。
ゼンタが引き留めようとしますが、オランダ人は自分こそが「さまよえるオランダ人」だと正体を明かし、船を出航させます。
ゼンタはオランダ人に対する「永遠の愛」を誓い、港の岩の上から海に身を投げます。
するとオランダ人の船は海へ沈んでいき、呪いから解放されたオランダ人とゼンタは天からの光を浴びて、天界へ昇っていきます。
ワーグナーの大作は熱狂的なファンが多くいます。
問題がある部分はさておき、楽劇・オペラのようなジャンルで特出した才能が煌めいた天才です。
見て聞いて楽しむクラシックは、ワーグナーが最高峰でしょう。
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