ジュゼッペ・ヴェルディ
ジュゼッペ・ヴェルディ(ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ Giuseppe Fortunino Francesco Verdi 1813年10月10日 ~ 1901年1月27日)は、オペラ音楽の世界で「オペラ王」と称され、その作品は今日に至るまで多くの人達に愛されてきました。
彼の作品は情熱的でドラマチックな要素が特徴であり、19世紀イタリアを象徴する存在とされています。特にシェイクスピアやシラーといった文学作品をオペラの台本として採用し、その感動的な物語を音楽を通じて表現しました。
ヴェルディとリヒャルト・ワーグナーは度々比較されますが、ヴェルディは人間ドラマの表現に重点を置き、実在の文学作品からインスピレーションを得ていました。一方、ワーグナーは神話や伝説を基に独自の世界を創造しました。
ヴェルディはピアヴェやボイトなど著名な台本作家と密接に協力し、彼らの文才とヴェルディの音楽的才能が見事に融合した作品を生み出しています。
彼の生い立ちはエミリア・ロマンーニャ地方の小さな村、レ・ロンコールで始まります。
ここでヴェルディは地元の教会で音楽の基礎を学び、若くしてその才能を示しました。彼の音楽教育はブッセートのサン・バルトロメオ大聖堂で本格化し、その地で出会ったアントニオ・バレッツィの支援を受けてさらに音楽の道を究めることができました。
ジュゼッペ・ヴェルディは若き日にミラノのスカラ座で学び、処女作の『オベルト』をはじめ、いくつかのオペラを作り、その後オペラ作曲家としての道を歩み始めました。そして彼の才能が広く知られるきっかけとなったのは、スカラ座で初演された『ナブッコ』です。
この作品に含まれる『ヴァ・ペンシエロ』「Va, pensiero, sull’ali dorate(行け、わが思いよ、黄金の翼に乗って)」という合唱は、ヘブライ人奴隷の悲痛な叫びを表現しており、イタリア民族主義の象徴としても受け入れられました。
ヴェルディのキャリアはその後も順調に進み、1850年代には『リゴレット』、『イル・トロヴァトーレ』、『椿姫』といった不朽の名作を世に送り出しました。これらの作品はそれぞれ異なる文学作品を原作としており、彼の多様な創作の才能を示しています。
成功を収めたヴェルディは故郷ブッセートに土地を購入し、家族のための農地と自身の住居を築きました。また、彼は音楽界だけでなく政治界にも進出し、地方議会議員や国会議員、そしてイタリア上院議員としても活動しました。
ヴェルディの作品には、オペラだけでなくレクイエムや神聖小品など、多岐にわたるジャンルがあります。特にレクイエムは、彼の代表的な非オペラ作品として知られています。
晩年、ヴェルディは一時的に音楽から退いたものの、シェイクスピア作品を原作とする『オテロ』と『ファルスタッフ』で劇場に戻りました。これらの作品は彼の芸術生活の集大成とされ、特に『ファルスタッフ』は80歳での初演となりました。
また、ヴェルディは慈善活動にも積極的で、地震の被災者支援や音楽家のための施設建設に寄与しました。彼の生涯を通じて音楽だけでなく社会への貢献も忘れなかったことが伺えます。
彼の生涯の締めくくりとなる作品「4つの聖なる小品」は、彼の深い宗教観を反映した作品であり、1898年にパリ・オペラ座で演奏されました。ヴェルディの音楽は彼自身の深い感受性と時代を超えた普遍的なテーマを探求する姿勢が反映されています。
ヴェルディはイタリアオペラの伝統を継承しつつ、その枠を大胆に拡張した作曲家です。
彼はカヴァティーナのような従来の形式に固執しながらも、それをさらに発展させ、オペラ音楽に新たな可能性をもたらしました。このアプローチによりオペラは単なる美しいメロディを超え、より深い感情的な表現が可能になりました。
初期の作品では比較的単純な和声を用いたヴェルディですが、彼のキャリアが進むにつれて和声言語には繊細さが増し、より複雑で冒険的な試みが見られるようになりました。特に後期の作品では音楽的なテクスチャーの中に微妙なニュアンスを織り交ぜることで、聴き手に強烈な印象を与えることに成功しています。
ヴェルディの管弦楽法は彼のオペラの劇的な要素を際立たせるための重要な手段となりました。
彼は楽器を使って情感を表現し、声部を効果的に支えることでオペラのドラマを一層引き立てることができました。このようにしてヴェルディはオペラの伝統的な枠組みを守りつつも、それを革新的に拡張することでジャンルの可能性を広げたのです。
ヴェルディの名曲・代表曲
ヴェルディの音楽が世界中で愛され続ける理由はその独特の魅力にあります。
彼の生涯を通じて作り出された名曲や代表曲は、情熱的でありながらも人間性に溢れ、聴く者の心を深く打つものです。
例えば、「椿姫」や「リゴレット」、「アイーダ」などはヴェルディの豊かな感情表現と独創的なメロディが際立っています。ただ美しいだけでなく、聴く者に強烈な印象を与える力を持っています。
ヴェルディはオペラに新たな命を吹き込み、それまでの伝統にはない独自性を確立しました。
その創造力と革新性は今日においても多くの音楽愛好家を魅了し続けています。
彼の作品に触れることで、私たちは人間の感情の奥深さや、生きることの喜びや悲しみを再発見することができるのです。
名曲1 歌劇『ナブッコ』(Nabucco)
『ナブッコ』はジュゼッペ・ヴェルディによる初期の傑作であり、1842年にミラノのスカラ座での初演以来、イタリア・オペラの歴史において重要な作品です。
このオペラはヴェルディのキャリアにおける初の大成功作とされ、彼の名を一躍有名にしました。初演が行われたシーズン中に57回もの上演が行われたことは、その人気の高さを物語っています。
物語の背景は旧約聖書に基づいており、バビロニアの王ネブカドネザル(オペラではナブッコとして知られる)がエルサレムを攻略し、ヘブライ人をバビロンに連行するという史実に基づいています。特に有名なのは、『ヴァ・ペンシエロ』「Va, pensiero, sull’ali dorate(行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って)」という合唱曲で、これは囚われのヘブライ人が自由と故郷を懐かしむシーンで歌われます。この曲は、当時オーストリアの支配下にあったイタリア人の心を打ち、後にイタリア統一運動の象徴と見なされるようになりました。
オペラの音楽的側面では、ヴェルディの創造力と革新性が際立っています。
序曲は329小節に及び、当時としては非常に長い部類に入ります。この序曲は、劇中の重要な旋律をふんだんに取り入れ、物語の雰囲気を効果的に前もって聴衆に伝える役割を果たしています。これはイタリア・オペラにおける序曲の典型的な形式を踏襲しつつ、ヴェルディ独自の音楽的アプローチが見て取れる部分です。
『ナブッコ』の成功は、単に時代背景や政治的な要因だけでなく、ヴェルディの音楽が持つ独自のエネルギーと感動によるものであると言えるでしょう。このオペラは今日でも世界中のオペラハウスで愛され続けており、ヴェルディの代表作の一つとしてその地位を確立しています。
『ヴァ・ペンシエロ』「Va, pensiero, sull’ali dorate(行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って)」
名曲2 歌劇『エルナーニ』(Ernani)
オペラ「エルナーニ」は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲し、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲を基にした作品です。
このオペラは1844年にヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演され、ヴェルディのキャリアにおいて重要な作品の一つです。
台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが手掛け、彼はその後もヴェルディと多くの作品で協力を重ねることになります。
物語は、没落した貴族で山賊のリーダーとなったエルナーニと彼を追うカルロス5世、そして二人の恋敵であるシルヴァ伯爵が織りなす複雑な三角関係を描いています。エルナーニはエルヴィーラという女性を愛していますが、彼女はシルヴァ伯爵との結婚を強いられています。一方、カルロス5世もまたエルヴィーラに想いを寄せており、彼女を巡る争いが激化します。
このオペラの物語は、登場人物たちの予測不可能な行動や心変わりによって、非常にドラマチックで緊迫感あふれる展開となっています。しかし、それがヴェルディの情熱的な音楽と相まって、観客を引き込む魅力的な作品に仕上がっています。特に、カルロス5世が神聖ローマ皇帝に選ばれたことでエルナーニに対する態度が一変し、彼とエルヴィーラの幸せを願うまでに至るクライマックスは、オペラの見どころの一つです。
「エルナーニ」はヴェルディの初期の作品ながら、彼の後の成功を予感させる力強いメロディと感動的なリブレットが特徴です。このオペラは、その後もヨーロッパ各地で上演され、ヴェルディの名声を不動のものとしました。
名曲3 歌劇『マクベス』(Macbeth)
『マクベス』は、ジュゼッペ・ヴェルディが手掛けたオペラで、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲を原作としています。
この作品は全4幕から構成され、1847年にイタリアのフィレンツェで初めて公演されました。
その後、1865年にヴェルディ自身によって内容が見直され、多くの点で原作に忠実な形へと改訂されました。この改訂版は、オリジナル版に比べて演劇的な深みが増し、現在では主にこのバージョンが世界中で上演されています。
あらすじ
第1幕
スコットランドの荒涼とした風景の中、マクベスとバンクォーは運命的な出会いを果たします。彼らが出会ったのは、未来を予言する力を持つ魔女たちでした。魔女たちはマクベスに二つの予言を投げかけます。「まずはコーダーの領主となり、その後スコットランドの王になるだろう」と。バンクォーに対しては、「お前の子孫が王位を継ぐ」という予言をします。
この出会いの直後、マクベスに新たな地位が与えられたことが伝えられます。コーダーの領主が亡くなり、ダンカン王がマクベスをその後継者と定めたのです。この知らせは、魔女たちの予言が現実のものとなった瞬間であり、マクベスとバンクォーに大きな衝撃を与えました。
一方、この予言を夫からの手紙で知ったマクベス夫人は、夫が王になる未来を確実なものにしようと決意します。その夜、ダンカン王が城に宿泊するという絶好の機会に、彼女はマクベスに王を暗殺するよう仕向けます。マクベスは葛藤の末、王の寝室に忍び込み、命を奪います。その後、動揺するマクベスから短剣を受け取った夫人は、それを寝室に戻し、自らの手も王の血で汚してしまいます。
この一連の出来事が、後の悲劇へとつながることになり、マクベスと彼の妻は、野望と恐怖の中でさらなる暴走を続けることになるのです。
第2幕
この一連の出来事が、後の悲劇へとつながることになり、マクベスと彼の妻は、野望と恐怖の中でさらなる暴走を続けることになるのです。
マクベスがスコットランドの王位に就いた直後、彼の心は不安と猜疑心に満ちていました。特に魔女たちの予言でバンクォーの子孫が将来王になるという言葉が彼を悩ませていたのです。これにより、マクベスはバンクォーとその息子フリーセを排除する決断を下しました。計画は部分的に成功し、バンクォーは暗殺されましたが、フリーセは逃げ延びることに成功しました。
この事件の後、マクベスは自らの王位を祝う大規模な宴を開催しましたが、そこで予期せぬ事態が発生します。宴席でマクベスはバンクォーの幻影に遭遇し、公然と取り乱しました。これを目の当たりにした貴族たち、特にマクダフはマクベスの振る舞いに疑問を抱き、最終的に国を離れる決意を固めました。マクベス夫人は夫を落ち着かせようとしますが、彼の精神状態は既に不安定で、彼女の試みは空しく終わりました。
この一連の出来事は、マクベスの支配がいかに不安定であるかを示しており、彼の行動は多くの貴族たちに不信感を抱かせ、彼らの忠誠心を失わせる結果となりました。
第3幕
マクベスは不安を感じて再び魔女たちの元を訪れました。彼に対する新たな予言として、魔女たちはマクダフを警戒するよう忠告し、「女性から生まれた者には敗れない」という幻影を見せます。さらに、「バーナムの森が自身の城に迫るその日まで、お前は敗れることはない」との予言も加えられました。これらの予言を受けたマクベスは、自分の安全を確保するためなら何でもする覚悟を固め、最初の行動としてマクダフの家族に手をかける決断を下します。この行動は、彼と彼の妻によって冷酷に実行されました。
第4幕
スコットランドの国境地帯で、追放された貴族や民衆が難民として集結し、彼らの中心人物であるマクダフは家族を失う悲劇に見舞われました。一方、マルコムはイギリス軍を率いて故郷スコットランドへの逆襲を開始します。
マクベス夫人は、夫と共に行った過ち、特に王の血を自らの手で流したことによる罪悪感に苛まれ、精神的に追い詰められていきます。彼女は最終的に狂気に陥り、命を落とすことになります。
マクベス自身も、平穏な余生を送ることが叶わないと感じつつ、進軍してくる敵軍を迎え撃ちます。彼の前には、バーナムの森から木の枝を身にまとい進むイギリス兵が現れます。この奇策により、まるで森自体が動いているかのような錯覚をマクベスに与えます。
最終的にマクダフとの一騎打ちになり、マクダフは帝王切開で生まれたことを明かします。これにより、マクベスは「女から生まれた者には負けない」という予言を破る形で敗れ、マクダフに討たれます。その後、マルコムがスコットランドの王として迎えられ、新たな時代が始まるのでした。
名曲4 歌劇『リゴレット』(Rigoletto)
「リゴレット」は1851年に初演され、瞬く間にヨーロッパ中で成功を収めました。このオペラは、強烈なドラマと心を打つ旋律で、観客を魅了しました。
ヴェルディの代表曲「女心の歌」は、オペラ「リゴレット」から生まれた名曲です。
この楽曲は愛と裏切りの複雑な物語を音楽を通して語ります。ヴェルディの生涯を通じて、彼は情熱的なメロディと深い感情表現で知られており、「女心の歌」も例外ではありません。
この曲は、リゴレットの娘ジルダが隠された愛に気づき、心の内を歌うシーンで使用されます。
ヴェルディは人間の感情の機微を巧みに捉え、音楽に落とし込むことで、聴く者に深い感動を与えます。
この曲を通じてヴェルディは恋愛のもつ甘美さとその裏に潜む痛みを見事に描き出しており、「女心の歌」は、ヴェルディの音楽が持つ普遍的な魅力と、彼の作品が今日に至るまで愛され続ける理由を象徴する作品と言えるでしょう。
あらすじ
第1幕
時は16世紀、イタリアのマントヴァ公爵の館で物語は展開します。
マントヴァ公爵はその魅力を利用して女性を惑わすことに長けており、その日も彼の目はチェプラーノ伯爵夫人に向けられていました。一方、公爵の忠実な道化師リゴレットは、公爵の振る舞いを面白おかしく演じ、周囲の人々を楽しませていましたが、その性格が原因で多くの人々から恨まれていました。
ある日、リゴレットに愛人がいるとの噂が広まり、チェプラーノ公爵の家臣たちからの反感を買います。さらに、モンテローネ伯爵が公爵に娘の名誉を汚されたと非難すると、リゴレットは彼を嘲笑います。その結果、伯爵はリゴレットに呪いをかけるのでした。
リゴレットは家に帰ると、彼の全てである娘ジルダを抱きしめます。彼女を守るため、リゴレットはジルダを外の世界から隔離し、教会への出席以外では外出を許していませんでした。しかし、運命のいたずらか、ジルダは教会でマントヴァ公爵と出会い、彼に心を奪われてしまいます。公爵は自らを貧しい学生と偽り、ジルダの心を射止めます。
その頃、公爵の家臣たちはリゴレットが愛人を囲っていると誤解し、彼を嘲笑うためにジルダを誘拐する計画を立てます。リゴレット自身が誘拐に加担する形で騙され、結果的に自分の娘が誘拐される手助けをしてしまうのです。
真実を知ったリゴレットの絶望と怒りは計り知れず、「ああ、呪いだ!」と叫びます。彼の愛する娘が、自らの過ちと運命のいたずらによって危険な状況に置かれてしまったのでした。
第2幕
公爵はジルダが誘拐されたと聞いて最初は悲しみますが、すぐに彼女が自分の城に連れてこられたことを知り喜び、すぐにジルダが閉じ込められている部屋へと急ぎます。
一方、リゴレットは娘がいなくなったことに気付き、彼女を探しに公爵の城へと向かいます。
城でジルダを見つけたリゴレットは廷臣たちに娘を返すよう強く迫ります。彼の感情は怒りと悲しみで溢れます。
ジルダはリゴレットに対し、恋には落ちたが、突然の誘拐により恥ずかしい目に遭ったと語ります。
この告白により、リゴレットの怒りはさらに燃え上がり、公爵に対する復讐心を強くします。
ジルダとの再会と彼女の言葉が、リゴレットの復讐の決意を固めることになります。このドラマチックな展開は、親子の絆と葛藤を色濃く描いています。
第3幕
事件が発生して数日が経ち、リゴレットはジルダを連れてスパラフチーレの宿屋へ向かいました。
彼はまだ公爵を愛している娘に、その愛が虚しいものであることを理解させるため、宿屋の窓から内部を覗かせます。その中で公爵は部屋と酒を要求し、やがてスパラフチーレの妹マッダレーナが登場します。公爵は彼女に言い寄り、マッダレーナ、ジルダ、リゴレットはそれぞれの感情を歌に託して表現します。
リゴレットはスパラフチーレに公爵の命を絶つよう依頼しますが、マッダレーナが公爵への愛情から彼の命を乞うため、スパラフチーレは別の人物を見つけて代わりに殺害する計画を立てます。この計画を壁の隙間から聞いてしまったジルダは、愛する公爵を守るために自らが身代わりとなる決意を固めます。
嵐が収まった後、リゴレットはスパラフチーレのもとを訪れ、公爵の死体が入ったとされる袋を受け取ります。彼は袋を開け、中には息絶えたジルダの姿が。彼女は「愛する彼の代わりに私が死ぬ」という言葉を残していました。その瞬間、近くで公爵の歌う「女心の歌」が聞こえ、リゴレットは全てを理解し、「ああ、呪いだ!」と絶望の叫びを上げます。
ヴェルディ《リゴレット》「女心の歌」 パヴァロッティ
名曲5 歌劇『イル・トロヴァトーレ』(Il Trovatore)
「イル・トロヴァトーレ」は、ヴェルディの代表曲の一つとして知られており、その中のアリア「あなたに重ねて」は世界中で愛される楽曲です。このアリアは、激しい情熱と深い悲しみが交錯する、感動的なメロディが特徴です。オペラの中でこの曲が登場する場面は、劇的な緊張感が高まる点であり、聴衆に強い印象を残します。
ヴェルディの音楽スタイルは、彼自身の感情を深く反映したものであり、その表現力の豊かさはオペラ音楽の可能性を広げることに貢献しました。彼の楽曲は、独特の旋律美と劇的な要素が組み合わさっており、これが世代を超えて多くの人々に受け入れられる理由です。
今日においても、ヴェルディのオペラは世界中の多くのオペラハウスで定期的に上演されています。
あらすじ
第1幕
かつてのアルゴン地方では、ルーナ伯爵家の悲劇が語り継がれています。
伯爵の弟は生後間もなく病弱となり、その原因をジプシーの老婆の呪いに求めた人々は彼女を火あぶりにしました。
しかし、その処刑の後、弟の姿は見えなくなり、代わりに発見されたのは幼児の骨だけでした。
この出来事は、ルーナ伯爵家に深い影を落としました。
時が流れ、ルーナ伯爵は成長し、地元の貴族としての地位を確立しました。
彼の心を奪ったのは、王妃付きの女官であるレオノーラでした。彼女は美しく、聡明で、多くの貴族が彼女に心を寄せていましたが、彼女の心は別の場所にありました。
レオノーラはマンリーコという吟遊詩人(トロヴァトーレ)と恋に落ちていたのです。マンリーコは情熱的で、彼の歌は多くの人々を魅了しました。
ルーナ伯爵とマンリーコの間で緊張が生じ、二人の対立は避けられないものとなりました。
伯爵はレオノーラへの愛とプライドから、マンリーコに対抗心を燃やしました。一方、マンリーコもまた、愛と名誉のために伯爵に立ち向かう覚悟を決めていました。
この二人の対立は、ただの恋の競争ではなく、名誉と誇り、そして過去の影が交錯する複雑な感情の戦いでした。
第2幕
ジプシーの女アズチェーナは、かつて自分の母が無実の罪で魔女として火あぶりにされた過去を持っています。
その出来事が原因で、彼女はルーナ伯爵家に対して深い恨みを抱いていました。
ある日、彼女はルーナ伯爵家の子を誘拐し、復讐のために炎の中に投げ入れようとしますが、その際に悲劇が起こり、誤って自分の息子マンリーコを炎に投じてしまいます。
この衝撃的な事実をアズチェーナはマンリーコに語ります。彼女の話を聞いたマンリーコは、自身の出生と身元に混乱と疑問を感じ始めます。
そんな時、彼は恋人レオノーラが自分の死を誤って信じ、修道院に入るという知らせを受けました。
マンリーコは急いで山を下り、レオノーラのもとへと向かいます。
一方、ルーナ伯爵もレオノーラが修道院に入るという情報を耳にし、彼女を奪うために手勢を引き連れて修道院へと急行します。そこでマンリーコと伯爵は再び出会い、緊張が走りますがマンリーコはレオノーラを連れてその場を去ることに成功します。
第3幕
アズチェーナはある日、ルーナ伯爵家の兵士たちによって捕らえられました。
彼女がかつて火あぶりにされた老婆の娘であり、マンリーコの母親であることが伯爵に明かされると彼は彼女を火あぶりの刑に処すことを決定します。
この一方で、マンリーコは恋人のレオノーラと将来の計画を語り合っていましたが、突如として母が捕らえられ、処刑される運命にあることを知ります。彼は激怒し、すぐさま仲間を集めて母を救出するために行動を開始します。彼らはルーナ伯爵の野営地へ急行し、救出作戦を展開することになります。
この救出劇はマンリーコとレオノーラの結婚の誓いという新たな絆を背景に、より緊迫したものとなります。彼らの愛と忠誠心が試される重大な瞬間です。
第4幕
マンリーコとその母アズチェーナは、ルーナ伯爵によって捕らえられ、処刑の危機に瀕していました。この知らせを受けたレオノーラは二人の命を救うために伯爵に直談判することを決意します。
彼女は自らを犠牲にしてでもマンリーコを救出する約束を伯爵と交わし、その証として毒を飲む決断をします。
レオノーラが伯爵に自分を捧げることでマンリーコの命は一時的に救われますが、彼女は毒の効果で弱り始めます。マンリーコに逃げるように告げるものの、彼女はすぐに力尽きてしまいます。
マンリーコはレオノーラの死と自らの命が救われた事実に苦しみます。
一方、伯爵は自分が騙されたことを知り、怒りに震えます。
彼は再びマンリーコの処刑を命じ、アズチェーナの制止も虚しくマンリーコは処刑されてしまいます。
その瞬間、アズチェーナは伯爵に向けて衝撃の事実を叫びます。「マンリーコはあなたの弟だったのです!」と。彼女は母の仇をとったと叫びながら、伯爵はその事実に愕然とします。
名曲6 歌劇『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』(La traviata)
ヴェルディの「椿姫」は、1853年に初演されたイタリアオペラの傑作です。
この作品は、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫」を基にしており、愛と犠牲の物語が描かれています。
主人公ヴィオレッタは、社会的な立場と真実の愛との間で葛藤します。
ヴェルディの音楽は、彼女の感情の起伏を巧みに表現しており、聴く者の心を強く打つことでしょう。
この楽曲の中で特に有名な「乾杯の歌」は、オペラ愛好家だけでなく多くの人々に親しまれています。生涯を通じて愛され続けるこの名曲は、ヴェルディの代表作として今もなお多くのオペラハウスで上演されています。
あらすじ
第1幕
時代は19世紀のパリ。
社交界で注目される高級娼婦ヴィオレッタの屋敷である夜、華やかなパーティーが開かれていました。
そのパーティで、ガストーネ子爵によって紹介された青年アルフレードは、会場を沸かせる「乾杯の歌」を披露し、参加者たちを魅了します。
アルフレードは以前からヴィオレッタに心を寄せており、二人がひとときを共にすると、彼は自分の感情を彼女に打ち明けます。ヴィオレッタは、自身が娼婦であるために真実の愛は望めないと考えていましたが、アルフレードの真摯な愛情表現に心を揺り動かされます。
しかし、その夜、ヴィオレッタは突然体調を崩し、倒れてしまいます。
彼女はアルフレードに椿の花を手渡し、再び会う約束をします。周囲の客が去った後、ヴィオレッタは一人残され、新たに芽生えた恋心と、自分の現実との間で葛藤します。彼女は自らの境遇を自嘲しながらも、恋に落ちた喜びを感じていました。
第2幕
ヴィオレッタとアルフレードは、パリの喧騒を離れて郊外の静かな生活を送っていました。
ヴィオレッタはアルフレードの愛を一心に信じ、彼との未来に希望を寄せていたのですが、彼女の過去が突如として二人の幸せを脅かすことになります。アルフレードの父、ジェルモンが訪れ、ヴィオレッタの過去がアルフレードの妹の結婚の障害になっていると告げます。ジェルモンはヴィオレッタに別れを迫り、彼女もアルフレードを思い、辛い決断を下します。
別れた後、ヴィオレッタは再びパリの社交界に戻りますが、心は決して穏やかではありませんでした。アルフレードはヴィオレッタが裏切ったと誤解し、彼女を追い詰めます。
社交界での一件で、アルフレードはヴィオレッタに対して公然と侮辱を浴びせ、彼女は深い悲しみに沈みます。この行動を後悔するアルフレードと、事態を収めようとするジェルモン。最終的には、ヴィオレッタの元パトロンであるドゥフォール男爵がアルフレードに決闘を挑むことになります。
第3幕
ヴィオレッタは病床に伏せ、結核の進行により生命の灯が次第に消えゆく中で愛するアルフレードの帰りを心待ちにしていました。
彼女の心の支えは、アルフレードの父ジェルモンからの心からの謝罪が記された手紙でした。
この手紙を何度も読み返し、彼の言葉に安堵し、彼の帰還を切望していました。
一方、アルフレードは父から全ての真実を聞かされ、急いでヴィオレッタの元へと戻りました。
彼は彼女の許しを乞い、二人で再び共に生活することを誓います。この再会により、ヴィオレッタの顔には一時的ながらも幸せな笑顔が戻りました。彼女は「痛みが和らぐ、もう一度ともに幸せになれる」と信じ、アルフレードとの未来を夢見ました。
しかし、病は彼女を容赦なく蝕んでいました。
アルフレードとの甘い再会の喜びも束の間、ヴィオレッタは力尽き、静かに息を引き取りました。
彼女の最後の瞬間は、過去の幸せな記憶とともに、愛するアルフレードへの深い愛情に包まれていたのです。
名曲7 歌劇『仮面舞踏会』(Un ballo in maschera)
ヴェルディの「仮面舞踏会」は、彼の創作活動の中でも特に感情的な深みとドラマティックな展開で知られています。このオペラは1859年に初演され、政治的な陰謀と悲恋を描いており、ヴェルディの音楽的才能が光る作品です。
特に愛と裏切りが交錯する物語は、多くのオペラファンを魅了しています。
生涯を通じて、ヴェルディは多くの困難に直面しながらもイタリアオペラの発展に大きく貢献しました。その情熱と献身が「仮面舞踏会」にも表れており、彼の代表曲として今も尚、多くの人々に愛されています。
あらすじ
第1幕
時は17世紀末、イギリス支配下のアメリカ、ボストンでの出来事です。
この地を統治する総督リッカルドは、部下の妻アメーリアに心を寄せており、彼女もまた夫とは異なる深い感情をリッカルドに抱いていました。ある日、リッカルドは仮面舞踏会の招待者名簿を見て、アメーリアの名前があることに心を躍らせます。
同時に判事がリッカルドのもとを訪れ、人々を惑わすとされる女占い師ウルリカの追放を要請します。リッカルドはこの女占い師に興味を持ち、正体を確かめるために部下のレナートを説得して彼女のもとへ行くことを決めます。
ウルリカの家では多くの信者が彼女の占いを求めて集まっていました。
リッカルドは漁師に変装してこの場に紛れ、ウルリカの占いを目の当たりにします。その中でアメリアが現れ、道ならぬ愛の苦しみから逃れる方法をウルリカに尋ねます。
ウルリカは深夜に郊外の死刑台で生える薬草を摘むようアメリアに告げます。この一部始終をリッカルドは隠れて聞いており、アメリアの真の気持ちを知り、彼女の後を追うことを決意します。
その後、リッカルド自身も占いを受けることになり、ウルリカは彼の手相を見て「親しい者の手によって命を落とす」と予言します。その瞬間、何も知らないレナートが現れ、リッカルドと握手を交わします。この予言を聞いた周囲の人々は驚愕し、リッカルドはこの予言を笑い飛ばしますが、その場には未知の危険が潜んでいることをウルリカは感じ取っていました。
第2幕
深夜、墓地に足を踏み入れたアメリアは、不意にリッカルドと遭遇します。
二人は互いの感情を確かめ合うように愛を語り合いました。その瞬間、突然レナートが現れると、アメリアは慌てて顔をヴェールで覆います。
レナートは周囲に反逆者たちが潜んでおり、リッカルドの身が危険であることを伝えに来たのです。
リッカルドはレナートに、アメリアの顔を見ないよう命じ、彼女を町まで安全に護送するよう頼み、自らはその場を去りました。
忠実なレナートはリッカルドの命令を遵守しようとしますが、その時、反逆者たちが襲い掛かります。
混乱の中、アメリアはヴェールを落とし、レナートの目の前でその顔が露わになります。
夫の前での突然の出来事に驚くアメリア、そしてレナートは自らの妻が総督と密会していたことを知り、深い裏切りを感じます。
第3幕
レナートは、夫婦の問題を乗り越え、最終的には総督リッカルドへの復讐を決意します。
彼の怒りは、反逆者たちとの協力を通じて具体的な行動へと移行しました。一方、リッカルド自身もアメリアとの関係を断ち切り、レナート夫妻を彼らの故国であるイギリスへ送り返す決断を下します。
仮面舞踏会の夜、緊張がピークに達します。
レナートはオスカルからリッカルドの仮装について聞き出し、計画を進行させます。アメリアはリッカルドに接近し、彼に迫り来る危険を警告するものの、時すでに遅し。
レナートはリッカルドに襲いかかります。リッカルドは倒れながらも、アメリアの無実を主張し、レナートに対して彼女を許すよう訴え、その場で息を引き取ります。この悲劇的な出来事は、登場人物たちに深い影響を及ぼし、彼らの運命を大きく変えることになりました。
名曲8 歌劇『運命の力』(La Forza del Destino)
ヴェルディの「運命の力」は、彼の創作活動の中でも特に印象的なオペラとして知られています。
この作品は1862年に初演され、その壮大な音楽と劇的な展開で多くの聴衆を魅了しました。
特に、「運命の力」序曲はクラシック音楽のコンサートで頻繁に演奏されるほど人気があります。
オペラは、運命に翻弄される登場人物たちの激しい感情が表現されており、ヴェルディの音楽的な深みと彼の生涯の経験が反映されていると言えます。この作品を通じて、ヴェルディは人間の運命と情熱を如何なく描き出し、オペラ史においても重要な作品となりました。
あらすじ
第1幕
時代は18世紀のスペイン、セヴィリャが舞台です。カラトラーヴァ侯爵の娘、レオノーラは恋人、ドン・アルバロとの愛を貫こうとしていました。
アルバロは破壊されたインカ帝国の末裔であり、その血筋は侯爵家のカトリックの信仰と高貴な家柄には受け入れがたいものでした。二人は家族の束縛を逃れるために逃亡を図りますが、計画が実行される前に侯爵に発見されてしまいます。
状況を把握したアルバロは、自らの非戦意を示すために手持ちのピストルを床に放り投げます。しかし、不運にもピストルが地面にぶつかった衝撃で暴発し、飛び出た弾が侯爵に命中してしまいます。侯爵は息を引き取る間際、娘に対して呪いの言葉を投げかけます。この悲劇に直面し、レオノーラとアルバロは混乱の中、城を後にするしかありませんでした。
第2幕
レオノーレがアルバロとはぐれた後、二人は互いに生存を疑いながらも別々の道を歩んでいました。
レオノーレは、偶然にも宿屋で兄ドン・カルロの存在を知ります。ドン・カルロは、父の仇と信じるアルバロを追っており、復讐心に燃えていました。この事実を知ったレオノーレは、さらに大きな恐怖と罪悪感に駆られます。
彼女は自分の過去と決別し、新たな人生を求めて遠く離れた修道院へと向かいました。
修道院に到着した彼女は、グァルディアーノ神父に全てを打ち明け、彼の助言を受け入れることにします。
彼女は世を捨て、修道院の裏手にある洞窟で隠遁生活を送ることを決意します。
そこで彼女は、誰にも邪魔されることなく、心の平和を求める生活を始めるのでした。
第3幕
アルバロとカルロは、それぞれの真の身分を隠し、イタリアの戦場で士官として務めていました。二人は戦場での出会いを通じて、互いの正体を知らずに深い友情を築いていきます。しかし、運命のいたずらにより、アルバロは戦闘中に重傷を負ってしまいます。彼はカルロに、自分が死んだ後に焼き捨ててほしいと頼み、彼に小箱を託します。カルロはアルバロの願いを尊重しようとしますが、好奇心に負けて小箱を開けてしまい、中にはレオノーレの肖像画が入っているのを発見します。この瞬間、カルロはアルバロが自分が探していた敵であることを知り、激しい感情の渦に飲まれます。
友情と復讐の間で葛藤するカルロは、最終的に復讐を選び、アルバロに襲いかかりますが、二人は警備隊によって引き離されます。アルバロは生死の境をさまよった末、もはや世界に居場所がないと感じ、修道院での隠遁生活を選ぶことに決めます。この物語は、偽りの下で育まれた友情と、突如として明らかになる真実が、人間の運命にどのような影響を与えるかを描いています。
第4幕
アルバロは修道院に身を隠し、静かな修道生活を送っていました。しかし、彼の過去を追い続けるカルロが5年の歳月を経てその居場所を突き止め、修道院に姿を現します。カルロはアルバロに決闘を挑みますが、アルバロは戦いを避けたいと願い、許しを求めます。しかし、カルロはその願いを拒否し、侮辱の言葉を投げかけます。それに怒りを感じたアルバロはやむを得ず剣を交えることになります。
同時に、レオノーラは山の洞窟で隠遁生活を送りながら、自身の運命に対する悲痛な祈りを捧げていました。彼女は知らずに兄カルロと運命的な再会を果たしますが、それは悲劇的な結末を迎えることになります。カルロは瀕死の状態でアルバロとの決闘の末、力尽きる前にレオノーラを誤って刺してしまいます。
レオノーラはアルバロとの短い再会を経て、死の間際に「天国で待っている」という言葉を残し、この世を去ります。アルバロは深い悲しみと絶望の中で、彼女の最期を看取ります。この悲劇的な出来事は、修道院の近くで神父に見守られながら静かに息を引き取ります。
名曲9 アイーダ
ヴェルディの「アイーダ」は、1871年にカイロのオペラハウスで初演された歴史的な作品です。
このオペラは、エジプトとエチオピアの戦争を背景に、奴隷として捕らえられたエチオピアの王女アイーダとエジプトの軍司令官ラダメスの禁断の愛を描いています。
ヴェルディは彼の生涯を通じて多くの名曲を残しましたが、「アイーダ」は特に彼の代表曲とされ、そのドラマティックな展開と感動的なメロディで多くの人々に愛されています。
楽曲の中でも「凱旋行進曲」は特に有名で、華やかなオーケストレーションが特徴的です。
このオペラは、ヴェルディの音楽的才能と劇的な表現力の粋を集めた作品として、今もなお世界中のオペラハウスで人気を博しています。
あらすじ
第1幕
メンフィスの王宮の広間で、祭司長ランフィスはラダメスにエジプト軍の最高指揮官に任命されたことを告げます。
ラダメスはこの知らせに興奮し、エチオピアを打ち破り、奴隷として暮らすアイーダを解放することを夢見ていました。一方、アムネリス王女もラダメスに秘かに恋心を抱いており、彼の心が自分に向いているか探ります。
突然、アイーダが現れ、アムネリスはラダメスの態度から彼がアイーダに恋していることを感じ取ります。その場の空気は一変し、アムネリスの心中は怒りと悲しみで複雑になります。
そこへエジプトの王と使者が登場し、エチオピア王アモナスロが侵攻してきたことを報告します。
国王はイシスの神託に従い、ラダメスを軍の総大将に指名します。
アムネリスはラダメスに勝利を祈りますが、アイーダは内心で葛藤します。
彼女にとってエジプトの勝利は故郷エチオピアの敗北を意味するからです。
シーンは変わり、火の神プタハの神殿で、巫女たちが祈りを捧げ、踊りを踊ります。祭司長ランフィスはラダメスに聖剣を授け、エジプト軍の勝利を祈ります。ラダメスもこの剣を受け取り、神にエジプトの土地を守るよう祈ります。巫女たちはその祈りに応じてさらに祈りを捧げ、この儀式を通じてラダメスは戦いへの覚悟を新たにし、アイーダの未来も彼の心の中で重くのしかかります。
第2幕
アムネリスはエジプトの王女として、エチオピアとの戦いが終わった後、宮殿で勝利の祝賀準備に取り掛かっていました。
彼女の周りでは侍女たちが忙しく動き、ムーア人奴隷たちは喜びを表現する踊りを披露しています。
しかし、アムネリスの心は一点の曇りもありました。彼女は密かにラダメスへの恋心を抱え、同時にラダメスがアイーダに惹かれているのではないかと疑っていました。
この日、アイーダがアムネリスの部屋に現れると、王女は侍女たちに退室を命じます。
そして、アイーダに対して一見優しく振る舞いながら、彼女の祖国の敗北を慰めつつ、ラダメスが戦死したという虚偽の情報を告げます。アイーダが悲痛な表情を浮かべると、アムネリスはアイーダがラダメスを愛していることを確信し、怒りを露わにします。
彼女はアイーダに対して、自分もラダメスを愛しており、王位を争うつもりかと問い詰めます。
その後、勝利の凱旋行進が始まり、アムネリスは憤りを抱えながら退場します。
アイーダは手の施しようがなく、ただ神に祈るのみでした。一方、門外では人々が集まり、エジプト軍の凱旋を祝う声が高らかに鳴り響いています。
ラダメスはアムネリスから勝者の冠を授かり、国王によって何を望むか尋ねられます。
ラダメスは捕虜の解放を求め、特にアイーダの父であるアモナズロだけが人質として留め置かれることになります。そして、ラダメスはアムネリスと結ばれ、やがて国を治める運命を告げられますが、アイーダとラダメスの心は絶望で満ちていました。
第3幕
ナイルのほとりに位置するイシス神の神殿で、神官たちが静かに祈りを捧げています。
アムネリスは、豊穣の女神イシスにラダメスとの結婚を祈願するため、神殿へと足を運びます。一方、アイーダはラダメスとの密会を期待して、誰にも見られずに神殿に忍び込みます。彼女は故郷を思い、心を痛めながら「わが故郷」というアリアを歌います。
突然、アイーダの前に彼女の父であるアモナスロが現れます。彼はアイーダに対し、エチオピア軍がエジプト軍に勝利するための情報をラダメスから得るよう強く迫ります。アイーダはこの要求に躊躇しますが、父親は彼女に対して親子の絆を断ち切ると脅します。
その時、ラダメスが現れ、アイーダは自分の本当の気持ちを告げ、「アムネリスの夫」としてではなく、共に逃げることを願います。当初はためらっていたラダメスも、最終的にはアイーダとの逃亡を決意します。しかし、安全な逃走ルートを選ぶためには、エジプト軍が駐屯していない道を知る必要があります。
ラダメスが思わず口を滑らせてしまった瞬間、アモナスロが隠れていた場所から飛び出し、喜びます。しかし、その場面をアムネリスと神官たちが目撃し、彼らはラダメスを捕らえます。
アイーダとアモナスロはその隙に逃げることに成功しますが、ラダメスは囚われの身となってしまいます。
第4幕
王宮の広間での一幕は、アムネリスがラダメスの裏切りに苦しみながらも、彼に対する情熱を隠せずにいる場面から始まります。アムネリスは、ラダメスがアイーダと共に逃亡しようとしたこと、そして彼女自身の恋が報われないことに心を痛めています。彼女は最後の試みとして、ラダメスを牢から引き出し、自分の感情をぶつける決意を固めます。
衛兵に連れられて現れたラダメスに対し、アムネリスは助命の条件として彼に弁明を求めますが、ラダメスは自らの行動を正当化せず、死を受け入れる覚悟を示します。アムネリスは、アイーダの父アモナスロが戦で死亡し、アイーダ自身も生きていることを告げ、ラダメスに忘れるよう迫りますが、彼の決意は変わりません。
裁判の場では、ラダメスは何を問われても沈黙を守り続け、最終的に裏切り者として死刑を宣告されます。この判決に対し、アムネリスは神官たちを呪います。
地下牢でのラダメスの最期のひと時は、彼が死を覚悟し、アイーダへの思いを馳せる中で進行します。そこに意外な形でアイーダが現れ、彼女が先回りして牢に入っていたことが明かされます。二人は互いの愛を確認し、天国で永遠に結ばれることを誓い合います。死を迎えるその時、二人は「さらば大地よ、さらば涙の谷よ」と歌いながら、天国への扉が開かれる幻を見ます。一方、地上の神殿では、巫女たちが火の神プタハに祈りを捧げ、アムネリスがラダメスの平安を祈っています。
名曲10 オテロ
ヴェルディの『オテロ』は、シェイクスピアの同名劇を基にして1887年に初演されたオペラです。
この作品はヴェルディの晩年の代表作として知られ、彼の音楽的成熟が如実に表れています。
『オテロ』は情熱的でドラマチックな音楽が特徴で、特に「愛の二重唱」や「嵐の音楽」は聴く者の心を強く打ちます。ヴェルディはこのオペラで、人間の感情の機微を巧みに捉えた旋律を創出しました。また、オペラの舞台設定やキャラクターの心理描写も非常に緻密で、観る者を物語の世界へと引き込みます。『オテロ』はヴェルディの生涯を通じて創作された多くの名曲の中でも、特に感動的で力強い作品です。
あらすじ
第1幕
キプロス島の港にて、嵐がついに収まり、住民たちがオテロの帰還を待ちわびていました。
オテロはムーア人であり、ヴェネツィア共和国からキプロス島の総督に任命されたばかりでした。
彼の到着とともに、人々は彼の勝利を讃えて歓声を上げました。その中で、ロデリーゴはオテロの妻デズデーモナに対する未練を抱え、苦悩します。
一方、オテロを憎むイアーゴは、彼が副官にカッシオを選んだことに不満を持ち、陰で企みを巡らせていました。彼はロデリーゴに接近し、自らの計画に加わるよう誘い出します。祝賀の宴が始まると、イアーゴはカッシオに酒を勧め、彼を酔わせることに成功。酔っ払ったカッシオはやがて制御を失い、ロデリーゴとの間で揉め事を起こします。この騒ぎにキプロスの前総督モンターノが介入しようとしますが、カッシオは彼にも剣を向けてしまいます。
この一件の報告を受けたオテロは、カッシオを副官の地位から解任する決断を下します。イアーゴは内心でこの事態を喜びつつも、オテロに対する忠誠を偽りますが、オテロはイアーゴの真意を知らず、彼の言葉を信じて疑いません。
最終的に、騒動が収束し、オテロはデスデーモナと共に静かなひと時を過ごし、二人は城へと向かいます。この地中海の小島での出来事は、後に多くの波紋を呼ぶこととなるのです。
第2幕
カッシオは副官の地位を失って大いに落胆していました。
そんな彼にイアーゴは策略を巡らせ、デズデーモナの取り成しを求めることを勧めます。イアーゴは彼女がオテロの心を柔らかくする力を持っていると説明し、カッシオに彼女に接触するチャンスを与えるための場を設けます。
デズデーモナはカッシオの復職を願い出るため、オテロに直接話を持ちかけます。しかし、この時、イアーゴはオテロにカッシオとデズデーモナの間に不適切な関係があるという疑念を植え付けます。
イアーゴの巧妙な言葉により、オテロは嫉妬に狂い、デズデーモナの誠実な頼みを冷たく拒絶します。さらにデズデーモナが差し出したハンカチを投げ捨てるほどに怒り心頭に発していました。
エミーリアがそのハンカチを拾い上げると、イアーゴはそれを手に入れ、自らの悪事をさらに進行させます。彼はオテロに対して、カッシオがデズデーモナのハンカチを持っていると嘘をつき、オテロの疑念を確信へと変えさせます。
このようにイアーゴはオテロとデズデーモナの関係を巧みに操り、オテロを嫉妬の淵に追いやります。そして、オテロはイアーゴに完全に信頼を置くことになり、二人は復讐を誓うのでした。
第3幕
イアーゴは巧妙に計画を進め、デズデーモナのハンカチをエミーリアを通じて手に入れ、それをカッシオの部屋にこっそりと置きます。
このハンカチはオテロとデズデーモナの結婚の象徴であり、イアーゴはこのハンカチを使ってオテロの嫉妬心を煽ります。カッシオがこのハンカチを持っているのをオテロに目撃させることで、デズデーモナの不貞を確信させるのです。
一方、ヴェネツィアからの使節が到着し、オテロに本国への帰還を命じるとともにカッシオをキプロスの新たな総督として任命します。この知らせはオテロにとってさらなる打撃となり、彼の精神状態は限界に達します。
デズデーモナがカッシオへの赦しを求めると、オテロは彼女に対してさらに疑念を深めます。そして、デズデーモナがハンカチを持っていないことを知ると、彼は彼女を激しく非難し、遂には彼女を追い出してしまいます。オテロはイアーゴの罠にはまり、完全に彼の操り人形と化してしまいます。
この一連の出来事が重なり、オテロはデズデーモナを殺害する決意を固めます。イアーゴの策略は見事に成功し、彼はオテロからの信頼を勝ち取り、副官の地位を手に入れることに成功します。しかし、この勝利も虚しいもので、多くの無実の人々が犠牲になったこの悲劇は、最終的には多くの悲しみと破壊をもたらすことになります。
第4幕
深夜、デズデーモナの寝室での悲劇が展開します。彼女は不穏な空気を感じ取り、エミーリアに慰められながらも、最後の祈りを捧げてベッドに入りました。その後、オテロが部屋に入ってくると、彼女に接吻し、デズデーモナは目を覚ます。彼女は熱心に自らの無実を訴えましたが、オテロはその訴えを受け入れることはありませんでした。彼は彼女の首を絞め、命を奪ってしまいます。
この悲劇の最中、エミーリアが部屋に駆けつけ、「ロデリーゴがカッシオを殺害しようとしたが、逆にカッシオに殺された」と報告します。彼女はデズデーモナの死体を目の当たりにし、絶叫します。その声によって、他の人々も部屋に集まり始めます。
エミーリアはさらに、ハンカチがイアーゴによって盗まれたこと、そしてそれがオテロを誤解させるための策略だったことを明かします。この事実を聞いたモンターノは、「ロデリーゴが死ぬ間際にイアーゴの計画を告白した」と伝えます。計画が露見すると、イアーゴは逃走し、兵士たちに追われることになります。
最終的に、オテロは自らの行動に絶望し、短剣で自分の胸を刺し、デズデーモナのそばで息絶えます。彼は最後の瞬間に彼女に口づけをしようと試みたのでした。この一連の出来事は、愛と裏切り、そして悲劇の深い絶望を浮き彫りにするものであり、その夜の寝室は多くの秘密と悲しみを秘めていました。
名曲11 シモン・ボッカネグラ
ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」は、彼の創作活動における重要な転換点を示しています。
このオペラは、政治的な陰謀と家族間の愛憎を巧みに描いた作品であり、ヴェルディの音楽的成熟が見て取れます。
特に主人公シモンの葛藤を通じて権力と人間性の間の永遠の闘争が表現されています。
このオペラが初演された1857年、ヴェルディはすでに「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」といった名作を世に送り出していましたが、「シモン・ボッカネグラ」の成功は彼の作曲家としての地位を不動のものとしました。オペラ愛好家だけでなく、音楽史を学ぶ上でもこの作品は欠かせない一篇と言えるでしょう。
あらすじ
プロローグ
中世のジェノヴァ、貴族と平民の間の緊張が高まる中、パオロという平民は、総督選挙での勝利を目指して海賊出身のシモンを推薦しました。シモン自身は政治的野心がなかったものの、パオロはシモンにマリアとの未来を救うために立候補するよう説得します。マリアはシモンの愛人であり、二人の間には子供がいましたが、マリアの父である貴族のフィエスコはこの関係を認めず、娘を自宅に閉じ込めてしまいます。
不幸にもマリアは病に倒れ、その死を知ったシモンは深い悲しみに沈みます。フィエスコはシモンに対し、マリアとの間にできた子供を引き渡すことを条件に和解を提案しますが、シモンは子供が行方不明になったと告げます。この事実を受け入れられないフィエスコは、会話を打ち切ります。
その夜、シモンはフィエスコの屋敷に忍び込み、マリアの亡骸と対面します。この悲劇的な出来事の中、シモンは自分が総督に選ばれたことを知り、喜びと悲しみが複雑に絡み合う心情を抱えます。周囲は彼の勝利を祝いますが、シモンの心は失われた愛と未来への不安に満ちていました。
第1幕
アメーリアとガブリエーレは、ジェノヴァの港町にあるグリマルディ家で出会いました。
アメーリアは、かつてシモン総督によって財産を狙われた家族の一員であり、彼女自身も政治的な駆け引きの中で重要な役割を担っていました。ガブリエーレは、アメーリアを深く愛しており、彼女の安全と幸福を何よりも優先していました。
ある日、シモン総督がアメーリアのもとを訪れます。この訪問は、アメーリアにとっては緊張の瞬間でしたが、シモンとの会話を通じて彼が実は彼女の生き別れの父親であることが明らかになります。
この驚くべき発見は二人の間に新たな絆を生み出し、シモンは以前の計画を撤回してアメーリアの幸せを願うようになります。
しかし、シモンの変心を知らないパオロは自身が結婚を約束されていたにも関わらずそれが取り消されたことに怒り、アメーリアを誘拐する計画を実行に移します。この誘拐未遂はガブリエーレによって阻止されるものの、彼は誤ってシモンが背後にいると疑います。
この誤解が解けた時、アメーリアとガブリエーレ、シモンは互いの誤解を解き、真の敵であるパオロの策略を暴きます。最終的にパオロは自らの罪を認め、グリマルディ家とジェノヴァの未来は再び明るいものとなりました。アメーリアとガブリエーレの愛は困難を乗り越え、さらに強固なものとなって二人は共に新たな生活を歩み始めるのでした。
第2幕
パオロは、シモンに対する復讐心を募らせ、彼の水差しに効果が遅い毒を混入します。
その毒によりシモンは深い眠りにつく。この間にガブリエーレがシモンを短剣で襲おうとするものの、アメーリアが間に入ってその行動を阻止します。この緊迫した瞬間、アメーリアはガブリエーレに自分がシモンの娘であることを明かします。
一方、都市では貴族派が暴動を起こし、シモンの宮殿を包囲しています。この危機的状況の中、ガブリエーレは自身も貴族の一員として群衆を説得し、暴動を収束させることを決意します。シモンはガブリエーレの行動が成功すれば彼とアメーリアの結婚を認めると約束します。
この物語の中で、パオロ、シモン、アメーリア、ガブリエーレの間には様々な感情が交錯しています。特にアメーリアの存在が重要で、彼女の行動が多くの事件の行方を左右します。また、ガブリエーレの忠誠と勇気が最終的には彼とアメーリアの未来を切り開くことにつながります。
第3幕
ガブリエーレとアメーリアの結婚式が盛大に行われる中、パオロは反乱の罪で捕らえられ、刑に処される運命にありました。
一方、シモンはパオロから毒を盛られ、その影響で体力が急速に衰えていました。
この緊迫した状況の中、長年姿を消していたフィエスコが現れます。彼はかつての恨みを晴らすためではなく、真実を明かすためにシモンの前に立ちました。フィエスコは、自分が死んだふりをしてグリマルディ家でアメーリアを育てていたこと、そしてアメーリアが実はマリアの娘であることをシモンに告げます。
シモンはこの衝撃的な事実を受け入れ、長年の恨みや憎しみを捨てて和解へと歩みを進めます。
彼はアメーリアにフィエスコが実の祖父であることを告げると同時に、ガブリエーレに総督の地位を譲る意志を表明します。その言葉を最後にシモンは静かに息を引き取りました。
フィエスコはガブリエーレが新たな総督として迎えられることを皆に伝え、シモンの死を悼む鐘が鳴り響きます。
名曲12 ドン・カルロ
ヴェルディの「ドン・カルロ」は、彼の創作活動の中でも特に感動的な作品として知られています。
このオペラはスペインの厳格な宮廷生活と個人の自由を巡る葛藤を描いており、政治的なドラマと情熱的な愛の物語が絡み合います。
ヴェルディは、登場人物の内面を深く掘り下げ、彼らの感情を音楽を通じて表現することに長けています。特に主人公ドン・カルロと彼の愛するエリザベッタの悲劇的な愛は聴く者の心を強く打つことでしょう。この作品はヴェルディの音楽的な成熟が見られる代表曲の一つであり、彼の生涯を通じて多くの人々に愛され続けています。
あらすじ
第1幕
サン・ジェスト修道院の中庭は、様々な感情が交錯する舞台となっています。
修道士がカルロ五世の墓前で祈りを捧げる一方で、王子ドン・カルロはかつて愛したエリザベッタ・ディ・ヴァロアのことを思い出しています。彼女は元々カルロと婚約していましたが、政略結婚により彼の父であるフィリッポ二世と結ばれてしまったのです。
この複雑な背景にロドリーゴが加わります。彼はカルロに対し、スペインの圧政に苦しむフランドルの人々を救うよう助言します。フランドルではカトリックのスペインによるプロテスタントへの迫害が進行中で、カルロにはそれを緩和する大きな役割が期待されているのです。
カルロとロドリーゴの間には固い友情があり、彼らは互いに支え合いながら困難に立ち向かっていくことを誓います。しかし、その中でカルロはエリザベッタへの未だ消えない愛をロドリーゴに打ち明けるのでした。
一方、エリザベッタもまた複雑な心境にあります。彼女は母からの手紙と共にカルロからの秘密の手紙を受け取り、ロドリーゴからはカルロを支援するよう依頼されます。彼女の心中は揺れ動きますが、カルロとの再会では、彼女は彼に対し、二人の愛が叶うことはないと伝えざるを得ません。
この物語は、愛と義務、友情と裏切りが絡み合いながら進行します。エリザベッタとカルロ、ロドリーゴのそれぞれが自らの役割と感情の間で葛藤しながら、彼らの運命が繊細に描かれていくのです。
第2幕
エリザベッタの女官であるエボリ公女は、カルロに対して深い愛情を抱いていましたが、彼がまだ王妃エリザベッタを愛していることを知り、激しい嫉妬の感情に駆られます。
ある夜、カルロがエリザベッタとの逢瀬を期待して庭園にやって来たところ、代わりに現れたのは顔をベールで覆ったエボリ公女でした。カルロが彼女に愛を告げると公女は自身の正体を明かし、カルロと王妃の関係を理解すると同時に彼らに対する復讐を誓います。この場面で、ロドリーゴが介入してカルロを守ろうとしますがエボリ公女の怒りは収まらず、彼女は更なる策略を企てるのです。
一方、都市の中心部では大きな騒ぎが起こっていました。
異端者たちが火刑に処される日で多くの人々が集まり、国王フィリッポ2世を讃える歌を歌っています。その中でカルロはフランドルの使節たちを引き連れて現れ、父王にフランドルの人々の救済を懇願します。しかし、フィリッポ王はその願いを一蹴し、カルロの行動を反逆と見なして彼を捕らえるよう命じます。
カルロが剣を抜くという突然の行動により緊張が高まりますが、ロドリーゴが割って入り、王子の剣を王に差し出して事態の収束を図ります。しかし、その後もカルロは牢に投じられることとなり、王との間の確執はさらに深まるのでした。
第3幕
フィリッポ王は、自らの王妃エリザベッタから愛されていないと感じ、孤独に苛まれていました。
彼はまた、息子カルロの運命にも深く悩んでいるのです。ある日、エリザベッタが彼の前に現れた際に、フィリッポは彼女の宝石箱からカルロの肖像画が見つかったことを知り、怒りに震えます。
この肖像画は、実はエリザベッタの女官であるエボリ公女がこっそりと盗み出し、国王に渡していたものでした。
エボリ公女は自分の行動の重大さを理解し、罪悪感に苛まれます。
彼女はエリザベッタに全てを告白し、カルロを救うために自らの過ちを償う決意をします。同時にカルロの親友であるロドリーゴも彼を救うために行動を起こしていました。ロドリーゴは自分を反逆者として差し出し、カルロの代わりに命を落とします。彼はカルロの独房を訪れ、フランドルの救済を彼に託しますが、その直後に暗殺されてしまうのです。
この間にカルロを解放するために民衆が暴動を起こしており、その騒動を利用してエボリ公女がカルロを牢から逃がす計画を実行に移します。この一連の出来事は王室内の複雑な人間関係と、個々のキャラクターの内面的な苦悩を浮き彫りにしています。フィリッポは最終的に息子との間に何が起こったのかを理解し、ロドリーゴの死を悼みます。彼の勇敢な行動は王にとって大きな影響を与え、彼の心情に変化をもたらしたのでした。
第4幕
エリザベッタは月夜の修道院で過去の幸せな日々を思い出していました。
彼女のもとにカルロが現れ、二人はフランドルへの旅立ちを前に永遠の別れを決意するのです。
この重要な瞬間にフィリッポ二世が突然登場し、カルロを逮捕しようと試みます。
しかし、予期せぬことに偉大なる先王カルロ五世の亡霊が現れ、カルロを救出してどこかへ連れ去りました。この出来事は、周囲の人々に衝撃と恐怖を与えました。
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