ニコロ・パガニーニの生涯
一般的には名ヴァイオリニスト、及び作曲家としての知名度も高いパガニーニですが、意外にもその生涯は知られていません。
今回は、ニコロ・パガニーニの生涯と彼の作曲した名曲や名盤CDを紹介していきます。
ニコロ・パガニーニ(Niccolo Paganini 1782年~1840年)は、18世紀から19世紀をまたいで活躍したイタリアの男性ヴァイオリニストです。
その偉大さから、クラシックに詳しくない方でも名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
ニコロ・パガニーニは、1782年にイタリア北部のジェノバ共和国(現在のジェノバ)に6人の子供の3番目として生まれました。
父のアントニオは、港湾関係や取引などの仕事をしつつ、マンドリン奏者としても収入を得るなど様々な仕事をしていました。父の影響を受け、5歳の頃にはマンドリンを教わるようになり、7歳にしてヴァイオリンへ転向しました。
このころから、虐待に近いほどの厳しいレッスンを父に施されており、食事もろくに取れないこともあったと言います。
非常に厳しい父のレッスンの甲斐もあってニコロの才能が開花し、ヴァイオリンのために多くの奨学金を得るに至ります。このような卓越した技量から、父は当時イタリアの音楽の都であったパルマへ息子を連れていき、現地のアレッサンドロ・ローラにレッスンを頼みます。
しかし、ローラはニコロ・パガニーニの実力を見抜き、すぐに自分の師匠であるフェルディナンド・パエルや、後にパガニーニの師であるガスパロ・ギレッティに紹介しました。
その後ニコロ・パガニーニは、父とともにイタリアを演奏旅行し名声を徐々に獲得していきます。
15歳の頃になると、イタリアに侵攻してきたフランス軍の貴族であるバチョッキの宮廷ヴァイオリン奏者となりました。
しかし17歳になるころにはバチョッキの元を離れて再び演奏の旅を始めると、その実力からパルマやジェノヴァなどで非常に人気を博していくようになりました。
イタリアを旅して演奏していたころから、その超絶技巧の高さによって「悪魔に魂を売り渡した代償」とも言われており、演奏会の前に十字を切るものや人間ではないと思った聴衆はパガニーニが浮いているのではと足元を見た者もいたそうです。
このような生活がしばらく続いた後、31歳となったミラノのスカラ座のコンサートで名声を不動のものとします。
コンサートの成功によって、イタリアのローカルな演奏から一躍ヨーロッパを代表するアーティストへと知名度を高めたのです。
45歳になるころには、その名声の高さはローマ教皇にも届き、時の教皇レオ12世はパガニーニに金拍車勲章を授与しました。
そのころ、イタリア限定のツアーもヨーロッパ全域まで拡大させ、ウィーンからフランスのストラスブールまで3年をかけて周り、ドイツ、ポーランド、ボヘミアのヨーロッパのすべての主要都市を訪れ各地で絶賛されています。
ただ、その陰には病気との戦いがありました。
慢性の咳をはじめ、梅毒、結核を患います。
さらに治療のために服用していたアヘンや水銀の影響が体を徐々にむしばんでいったのです。
そして1834年、52歳になったパガニーニは、ついに演奏家としてのキャリアに終止符を打ちました。
本来であれば、自分の卓越した技術を秘密にしたかったようですが、学生の受け入れを始め、作曲や技法の指南書の出版を開始します。
現代のヴァイオリニストが演奏している楽曲や後述する名曲はこの頃に作られたものがほとんどです。
53歳になったパガニーニは、ナポレオンの2番目の妻であるオーストリアのマリー ルイーズ大公妃に雇われ、プロデューサーとして活躍していきます。
しかし演奏家たちと対立したことから脱退し、パリで実業家になったものの事業に失敗、私物を競売にかけて財産を多く失いました。
そして、1840年に持病の悪化によって死去します。
当時の名声は著しく、悪魔との関係が広く噂されていたため、遺体は防腐処理されたまま各地を転々とし、1876年にようやくパルマへ埋葬されて現在に至ります。
パガニーニに付いての解説動画
【ゆっくり解説】悪魔と呼ばれたイタリアのヴァイオリニスト パガニーニの生涯
デジタル音声なので、苦手な人もいるかもしれませんが、分かりやすく詳しい内容まで解説されている素晴らしい動画です。
ニコロ・パガニーニの名盤
ヴァイオリニストとして、あまりに卓越した技術を持っていたパガニーニの作曲した作品は、難度が非常に高いものがあり、腕に覚えのあるヴァイオリニスト達にとっても大きな壁となっているものもあります。
パガニーニ『24の奇想曲』などはその最たるもので、ヴァイオリン演奏曲の中でも最高難度の曲となっています。
ただ、パガニーニの作曲した作品は超絶技巧で難しい曲をイメージする人も多いと思いますが、美しい曲も作曲していますので後ほどご紹介します。
ニコロ・パガニーニは、当時を代表するヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストでしたが、レコードなどが発明される前の人物のため、現代において、本人の演奏を聞くことはできません。
しかし、多くのヴァイオリニストによって現在も良く演奏されており、名曲や名盤と呼ばれるディスクも存在します。
ここでは、ニコロ・パガニーニの名曲が楽しめる名盤CDとして、次の3つを紹介していきましょう。
・パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番《ラ・カンパネッラ》サルヴァトーレ・アッカルド
パガニーニの再来といわれるイタリアの名ヴァイオリニスト、アッカルドが演奏する名盤です。
ヴァイオリン協奏曲第1番は、若き頃のパガニーニが作曲したヴァイオリンのための名曲で、この当時から非常に高い技術を要求する楽曲を多数作曲、演奏していました。
それをアッカルドが美しく、華やかで、かつ風光明媚なイタリアを思わせる演奏で再現しています。
・ア・パガニーニ(UHQCD) ギドン・クレーメル
ドイツの名ヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルが演奏し、パガニーニに触発されて生まれた無伴奏ヴァイオリンの名曲を集めたクレーメルの名盤です。
超絶テクニックを必要とする作品たちを自在に演奏する様子が圧巻の一枚です。
・パガニーニ:24のカプリース シュロモ・ミンツ
イスラエルのヴァイオリニスト、シュロモ・ミンツがパガニーニ作曲による24の奇想曲を弾き切った一枚です。
同曲は、パガニーニのヴァイオリン無伴奏曲で、24番に至るすべてのシーンにおいてヴァイオリニストを悩ませる高い技術を要求しています。
それをミンツが冴え渡る演奏でパガニーニを再現する一枚に仕上がっています。
パガニーニの希少盤CD
Biddulph(ビダルフ)レーベルのルッジェーロ・リッチによるパガニーニ 24の奇想曲 Op.1 LAW01
希少で人気のBiddulphのCDということもあり、中古市場でも高価になっています。
パガニーニの権威と言われ、ヴァイオリンの鬼神と称されたルッジェーロ・リッチによるパガニーニ作品。
ルッジェーロ・リッチは20世紀を代表するヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストの一人です。
Teldec パガニーニ ヴァイオリン&ギター ジェルジ・テレベシ(Vn) ソーニャ・プルンバウアー(g)
Teldec ヴァイオリン&ギター ジェルジ・テレベシ(Vn) ソーニャ・プルンバウアー(g)
ジエルジ・テレべジ(ヴァイオリン)と、ソーニャ・プルンバウアー(ギター)によるパガニーニのヴァイオリンとギターの名演CD。
ヴァイオリンとギターによる組み合わせですが、なんとも言えない絶妙な音色が秀逸な作品です。
アッカルド パガニーニ:ジェノヴァの歌「バルカバ」による60の変奏曲の練習曲
パガニーニがヴァイオリンの演奏から引退して故郷であるジェノヴァで作曲され、録音もほとんど残っていない曲の一つです。
アッカルドのパガニーニと言えば、『ラ・カンパネッラ』が有名ですが、こういった珍しい曲も演奏し、録音しています。
こちらもヴァイオリンとギターのための作品です。
パガニーニのヴァイオリン作品動画
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番 第3楽章 ラ・カンパネラ
現代を代表するヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストの一人ユリア・フィッシャーによる「ラ・カンパネラ」。
技術や解釈によりいろんな演奏がありますので、お気に入りの演奏を探すのも楽しそうです。
パガニーニ:『24の奇想曲(カプリース)』
ギネス認定のヴァイオリンの速弾きで世界一のデイヴィッド・ギャレットによる『24の奇想曲(カプリース)』。
超絶技巧が必要なこの曲にはピッタリの演奏者。イケメンのヴァイオリニストでも有名です。
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