- モーツァルト
- モーツァルトの名曲10選
- モーツァルトの名曲1 フィガロの結婚
- モーツァルトの名曲2 レクイエム ニ短調 K.626
- モーツァルトの名曲3 フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
- モーツァルトの名曲4 モーツァルト交響曲 第41番≪ジュピター≫ハ長調K 551
- モーツァルトの名曲5 アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525
- モーツァルトの名曲6 歌劇:「ドン・ジョヴァンニ」
- モーツァルトの名曲7 モーツァルト:交響曲 第36番 ハ長調 K.425 ≪リンツ≫
- モーツァルトの名曲8 ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K 331
- モーツァルトの名曲9 クラリネット協奏曲イ長調 K 622
- モーツァルトの名曲10 クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
モーツァルト
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト【1756年1月27日(ザルツブルク)~1791年12月5日(ウィーン)】は、古典派音楽・ウィーン古典派を代表する、西洋音楽史上最も偉大で最も影響力のある作曲家の一人です。
わずか35年の生涯で非常に短命でしたが作曲のスピードは非常に早く、同時代のほとんどジャンルで作曲しており、トータル800以上の曲を作りました。
交響曲・協奏曲・室内楽・オペラや合唱等、合唱曲・器楽曲・声楽曲など当時の音楽ジャンル全てにおいて名曲を残しています。
モーツァルトは新しい和声や構造のアイデアを探求し、作出した楽曲は度々古典的なスタイルの境界を押し広げましたが、既存の形式の統合・完成にも力を注ぎ、最高級の品質にしていくことで史上最高の音楽家の一人となりました。
仕事熱心で音楽をこよなく愛し、時間やお金を惜しまないことでも知られていましたが、ユーモアのセンスに優れており、たまにユーモラスな音楽を書いたこともよく知られています。
陽気で外向的な性格で知られていますが、彼は非常に知的であり、驚くほど仕事熱心であったといいます。そして自分の作品に情熱を注ぎながらも他の人と共有することを好みました。
多くの人達が彼のウィットとカリスマ性、そして寛大さと優しさを認識しており、また野心的で競争心の強い性格でも知られ、常にベストを尽くそうと努力していた人物であったようです。
彼は偉大な作曲家なだけでなく、指揮者・ピアニスト・オルガニスト・ヴァイオリニストとしても優れた才能がありました。
あのヨーゼフ・ハイドンに「後世の人々は100年以内に再びこのような才能を見ることはないだろう」とまで評されるほどその才能は傑出しており、まさに本物の天才と言えるでしょう。
モーツァルトが天才と言われる理由の一つとして、彼は芸術的な素晴らしさと優れた技術を組み合わせて素晴らしい名曲の数々を生み出したことが挙げられます。また、彼は素早く曲を書くことができ、新しい作品を短時間で作り出すことができたことも彼の天才性を物語っています。
モーツァルトは大部分の作品を17歳以下の時に作曲しましたが、彼の音楽には複雑で抽象的な概念が融合されており、いかに彼の創造力と音楽性が豊かであったかを理解することができます。他の作曲家が長期的に音楽的構築を作ろうとしているのにもかかわらず、抽象的な概念を音楽的な美しさへ短期的に創造することができる天才的な才能を持っていたのです。
モーツァルトの曲は現代になってもほとんどの人達がどこかで聞いたことがある、何か耳に残っている曲があると思います。
現在でも映画やテレビ、CM、美術館や高級ホテルなどでもモーツァルトの曲が流れており、時代を超えた音楽は、その才能の凄まじさを表しています。
そんな偉大なモーツァルトの膨大な曲の中から、名曲を選ぶとしたら何を選んだら良いのでしょうか?
有名な曲はもちろん、隠れた名曲も多数あります。
モーツァルトの解説動画(本当に天才な理由)
モーツァルトの代表曲
モーツァルトは交響曲・宗教音楽・オペラ・セレナード・協奏曲・室内楽曲・ソナタなど、多くのジャンルの名曲を作出しています。
モーツァルトの代表曲は印象的なメロディで知られており、よく長く叙情的なフレーズが登場しますが、その作品は明確な始まり・展開・終わりを持つ、美しく構成された楽曲となっています。
表情豊かで多様な和声進行を特徴とし、時々予期せぬ転調や半音階的な表現がありますが、サスペンデッドやアポジャトゥーラなど当時の音楽的な慣習を一貫して利用しながら優雅で流れるようなストーリーで書かれていることも特徴的です。
800以上と言われる作品の中から、下記楽曲はその代表的なものとなります。
モーツァルトの代表曲一覧
交響曲 | 第1番、第25番、第29番、第35番「ハフナー」、第36番「リンツ」、第38番「プラハ」、第39番、第40番、第41番「ジュピター」 |
5大オペラ | 「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「後宮からの誘拐」「コジ・ファン・トゥッテ(女はみなこうしたもの)」「魔笛」 |
宗教音楽 | 大ミサ曲、レクイエム、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 |
セレナード | 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」「セレナータ・ノットゥルナ」 |
ピアノ協奏曲 | 第20番、第21番、第22番、第23番、第24番、第26番、第27番 |
ヴァイオリン協奏曲 | 第3番、第5番「トルコ風」 |
管楽器のための協奏曲 | クラリネット協奏曲、フルート協奏曲第1番、フルートとハープのための協奏曲、オーボエ協奏曲、ホルン協奏曲 |
弦楽四重奏曲 | ハイドン・セット、プロシャ王セット、第17番「狩」 |
弦楽五重奏曲 | 第3番、第4番、 |
その他室内楽曲 | クラリネット五重奏曲、オーボエ四重奏曲 |
ピアノソナタ | 第8番、第10番、第11番「トルコ行進曲付き」、第14番、2台のピアノのためのソナタ |
ピアノのための変奏曲 | きらきら星変奏曲(フランスの歌曲「ああ、お母さん、あなたに申しましょう(Ah! vous dirai-je, maman)」による12の変奏曲)ハ長調 K.265 |
その他の楽曲 | アダージョ、ディヴェルティメント |
ここでご紹介するモーツァルトの名曲10選はおこがましくも管理人の独断と偏見によりセレクトしています。ご理解の上、お楽しみください。
※順不同
モーツァルトの名曲10選
モーツァルトの名曲1 フィガロの結婚
(Mozart, Wolfgang Amadeus:opera 《Le Nozze di Figaro》)
『フィガロの結婚』は1784年にピエール・ボーマルシェが発表した同名の戯曲が元になっており、ロレンツォ・ダ・ポンテの台本を基にヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した喜歌劇です。
このオペラはアルマヴィーヴァ伯爵とその従者のフィガロとスザンナが彼の淫らな誘惑を振り切ろうとする姿を描いています。
伯爵夫人、ケルビーノ(伯爵夫人に恋する少年)、バルトロ博士(伯爵の元後見人)など、さまざまな人物に出会います。
このオペラはウィットと美しさに満ちた華麗で複雑なスコアで有名で、そのアリアやアンサンブルは序曲や第4幕のフィナーレをはじめ、クラシック音楽の中でも最も有名な曲の一つとなっています。
「フィガロの結婚」はモーツァルトの最高傑作のひとつとされ、オペラのレパートリーの根幹をなす作品で、1786年にウィーンのブルク劇場で初演されて以来、数え切れないほど上演されている名作です。
超短いあらすじ
セヴィリャのアルマヴァ-ヴァ伯爵の従者フィガロと女中のスザンナが結婚の準備をしていますが、大の女好きであるアルマヴィーヴァ伯爵が、お気に入りのスザンナを自分のものにするために悪だくみをします。
伯爵の夫人は伯爵の愛が希薄になっていくことを悲しみ、フィガロとスザンナと協力をして伯爵を懲らしめようとしますが、あえなく失敗。
フィガロの驚きの生い立ちが判明し周囲の人達をも味方になり、フィガロとスザンナは結婚することができました。
フィガロとスザンナが結婚をしてもまだ諦められない伯爵に罠を仕掛けます。
罠に気づかず伯爵はスザンヌの服を着た伯爵夫人を口説いてしまい、伯爵の計画は失敗。
自らを悔い、夫人に心から謝罪をしたことで周囲から祝福されてジエンドとなります。
かなり面白いドタバタ劇で、オペラの中でも大変人気がある作品です。
フィガロの結婚の解説動画
フィガロの結婚の解説動画
モーツァルトの名曲2 レクイエム ニ短調 K.626
(Mozart Requiem in d-Moll)
モーツァルトの「レクイエム ニ短調」K.626は、1791年にモーツァルトが亡くなった際に未完成のまま残した鎮魂ミサ曲で、レクイエムの中盤の8楽章「ラクリモーサ(涙の日)」の最初の8小節まで作り、モーツァルトはこの世を去りました。
モーツァルトはこの曲を自分で完成させず、愛弟子のフランツ・クサ-ヴァー・ジュ-スマイヤーに未完成のまま託したとする説が有力とされています。
フランツ・クサ-ヴァー・ジュースマイヤーの加筆により完成(1792年付け)させ、依頼主であるヴァルゼック伯爵に届けられたということですが、ヴァルゼック伯爵は巧妙な手口で素晴らしい作品は自分の作品にしてしまうとんでもない男で、このレクイエムも自作の曲にするつもりでした。
この曲が公に演奏されたのはモーツァルトの死後2年経った1793年です。
このレクイエムは18世紀のレクイエム・ミサの慣習であった伝統的なラテン語のミサ形式によって作曲されており、複雑なポリフォニー、半音階的な表現、予期せぬ和声の変化など、力強く劇的な音楽表現で知られています。
ジュースマイヤー版のほかにも20世紀に入ってから音楽学者によって多くの代替的な完成形が開発されており、もっとも好意的に受け止められていると言われるアメリカの音楽学者ロバート・D・レヴィンによる完成版だと言います。
【名曲解説動画】未完の傑作レクイエム!モーツァルト最後の一年と謎の依頼人!モーツァルト最高傑作の一つ、レクイエムの魅力を解説!
モーツァルトの名曲3 フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
(Mozart Concerto for Flute Harp and Orchestra in C major, K 299)
1778年4月にモーツァルトがギネス宮廷のためにパリに滞在していた先で書いた協奏曲です。
フルートとハープ及び管弦楽のための協奏曲で、モーツァルトが書いた協奏曲(ピアノ協奏曲第10番、ヴァイオリン、ヴィオラ、オーケストラのための協奏曲)のうちの1つであり、ハープが入る唯一の曲です。
ハープはまだオーケストラに使用される標準的な楽器とはみなされておらず、撥弦楽器の一つとして認識されていたため、フルートとハープの協奏は非常に珍しいものでした。
モーツァルトはフルート奏者でもハープ奏者でもありませんでしたが、2つの楽器を使用して当時人気のあった協奏交響曲(シンフォニア・コンチェルタンテ)の形式をとっており、聴衆の好みを想定して作曲しています。
ハープとフルートは音質の違いも大きいため、現在ではオーケストラを伴わない室内アンサンブルで演奏されます。
フルート、ハープ、弦楽器のために書かれたこの協奏曲は、3つの楽章で構成されており、4/4拍子の華やかなアレグロ・マエストーソの楽章で始まります。
フルートとハープはそれぞれの演奏技術を披露する機会を与えられており、生き生きと対話しながら弦楽器が伴奏を担当し、エネルギーと興奮に満ちたダイナミックな相互作用が生まれます。
第2楽章は、3/4拍子のアンダンティーノです。フルートとハープが交互にメロディーを歌う、美しく叙情的な曲です。
弦楽器は繊細な伴奏を奏でながら音楽に質感と深みを与え、フルートとハープは度々ハーモニーを奏でることで、みずみずしくロマンティックな響きを作り出しています。
最終楽章は、2/2拍子、ロンド形式のアレグロです。
フルートとハープが戯れるように対話する、明るく生き生きとした楽章となっています。
モーツァルトの名曲4 モーツァルト交響曲 第41番≪ジュピター≫ハ長調K 551
(Mozart Symphony No. 41 in C Major, K. 551, “Jupiter”)
1788年8月10日に完成させた交響曲第41番「ジュピター」ハ長調K.551は、モーツァルトの最高傑作のひとつであり、彼が書いた最後の交響曲とされています。
この交響曲はその劇的で感情的な内容、壮大さ、そして複雑な音楽構造で、クラシック音楽における交響曲の中でも最高レベルの曲と考える評論家も多くいます。
当初「終結フーガ付き交響曲」と呼ばれていましたが、古典派の交響曲としては壮大なスケール感を持っているため、古代ローマ、パンテオンの主神である「ジュピター」の名がついたと言われています。
ロンドンの人達から「ジュピター交響曲」という愛称で呼ばれています。
この愛称は、ドイツの音楽家で興行主でロンドンのヨハン・ペーター・サローマンが言い始めたと考えられています。
交響曲の第1楽章はソナタ形式のアレグロ・ヴィヴァーチェで、ハ長調の雄大で力強い序奏で始まり、主テーマのファンファーレとして機能しています。
序奏の後、第1主題は駆動するリズムと力強い和音で、勢いよくエネルギッシュに演奏されます。
第2主題は第1主題とは対照的な叙情的な内容となっており、展開部で劇的な転調と、激しいドラマから軽快なユーモアまで、さまざまな感情が表現されます。
再現部では短調で再現された部分がありますが、ハ長調の主要主題に回帰し、のびやかな力強さをもってこの楽章を締めくくります。
交響曲の第2楽章はヘ長調のアンダンテ・カンタービレです。
レガートな旋律と穏やかな伴奏を特徴とした上品でシンプルかつ叙情的な曲です。
この楽章は、穏やかで平和な雰囲気が特徴的であり、和声構造には一抹の寂しさが感じられる緩徐楽章です。
第3楽章は半音階法が使われており、ハ長調のメヌエットとトリオの部分で構成されています。
メヌエットは優雅で遊び心のある踊りであり、トリオはよりシリアスでドラマチックに表現されたのちにメヌエットの主題への回帰で楽章は終わます。
交響曲の第4楽章はハ長調のモルト・アレグロでソナタ形式をとっています。
この楽章は、モーツァルトが特に好んだモチーフで、ジュピター音階「ドーレーファーミ(C-D-F-E)」を軸に複数の動機が複雑に絡み合います。ヴァイオリンの速いソロで始まり、複雑な対位法と急速なリズムを特徴とするフーガのようなセクションが続き、展開部のあとの長いコーダ、そして感動的なフィナーレで締めくくられます。
交響曲第41番「ジュピター」ハ長調K551は、モーツァルトの天才ぶりが発揮された素晴らしい作品で、ドラマ性、感情的な深み、構造的な複雑さを兼ね備えた古典派のスタイルを完璧に表しています。
この交響曲はモーツァルトの交響曲の締めくくりとしてふさわしいものであり、作曲家としてのモーツァルトの偉大さを証明しています。
モーツァルトの名曲5 アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525
(Mozart Eine kleine Nachtmusik K. 525)
アイネ・クライネ・ナハトムジーク(Serenade No.13 for strings in G major)K.525は、モーツァルトが1787年に作曲した室内アンサンブルのための曲で、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の作曲に励んでいた時期に書かれたものと言われています。
ドイツ語のタイトルはモーツァルトが個人目録に記載した「小さな夜の音楽」を意味しています。
コントラバスによる管弦楽のアンサンブルのために書かれた作品で、弦楽合奏で演奏されることも少なくありませんがヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという比較的簡単な編成により構成された曲で、それまでのセレナーデとは一線を画す作品となっています。
曲はト長調(第2楽章のみハ長調)で4つの楽章から構成されている「アレグロ」「ロマンツェ:アンダンテ」「メヌエットとトリオ:アレグレット」「ロンド:アレグロ」の4つの楽章で構成されています。アレグロ楽章が最も印象的で、明るく陽気な感じが特徴的なお祝いや楽しい時間を意味する曲としてよく使われる明るく元気な曲です。
ロマンツェ楽章はより穏やかで叙情的な曲でゆったりとしたロマンティックな曲であり、ラブソングとして演奏されることが多い楽章です。
メヌエットは軽快で遊び心のある楽章で、気ままで軽快な雰囲気を意味するためによく使われます。
最後にロンドはこの曲の中で最もエネルギッシュで明るい楽章で、喜び・勝利・成功を意味するためによく使われます。
モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、今でも多くの人に演奏され、楽しまれている不朽の名作です。結婚式から誕生日パーティーまで、どんな場面にもぴったりな曲です。
モーツァルトの天才的な才能を見事に表現しており、今日でも多くの音楽家が楽しみながら演奏しています。
現在でも非常に人気のあるこの曲は多くの演奏や録音があり、モーツァルトの偉大さを示す作品の一つとなっています。
モーツァルトで一番人気!?名曲アイネ・クライネ・ナハトムジークを紹介!セレナーデ、メヌエット、ロマンツェとは何?
モーツァルトの名曲6 歌劇:「ドン・ジョヴァンニ」
(Don Giovanni)
モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」はクラシックのレパートリーの中で最も愛され、よく知られているオペラの一つです。
このオペラは裕福で女好きのスペイン貴族、ドン・ファンの伝説に基づいており、このリブレットは、当時の著名なリブレット作家であったロレンツォ・ダ・ポンテによって書かれました。
ドン・ジョヴァンニがヨーロッパ中を旅しながら女性を誘惑し、その結果から逃れようとする姿が描かれています。
あらすじ
舞台は18世紀半ばのスペイン。貴族のドン・ジョヴァンニは手当たり次第に女性を誘惑し、放蕩の限りをつくしていました。
ジョヴァンニに使えるレポレロは、いつも、いやいやながらも見張りをさせてられています。
今夜の目的は騎士団長の娘ドンナ・アンナ。
寝室に忍び込むも騒がれて失敗します。駆け付けたアンナの父親の騎士長とジョヴァンニは戦いますが、騎士長は殺されてしまいます。
アンナは婚約者のドン・オッターヴィオに父の仇を討ってもらえるよう頼みます。
朝、また別の女性に声をかけますが、それはジョヴァンニの裏切りに打ちのめされていたドンナ・エルヴィラでした。ジョヴァンニはレポレオに任せて逃げてしまいます。
レポレロは、ジョヴァンニが誘惑した女性の名前が書かれた手帳を見せ、沢山の被害者がいることを告げます。
次は農夫のマゼットと結婚式を挙げているゼルリーナという娘を狙い、計画を立てて実行しますが、もう一歩というところでドンナ・アンナとその婚約者ドン・オッターヴィオ、そしてドンナ・エルヴィラの3人が現れ、あえなく失敗となります。そこでもジョヴァンニとレポレロはなんとか脱出します。
そんな失敗など全く意に介さず、ジョヴァンニはレポレロと服を交換して女性を求め町へと繰り出します。
ジョヴァンニの服を着たレポレオは、ジョヴァンニ本人と勘違いをされてドンナ・アンナ達に取り囲まれたりしながらもなんとか逃げきります。
レポレロはジョヴァンニと墓場で落合いますが、そこには殺したあの騎士長の石像があり、話しかけてきます。
ジョヴァンニは石像を食事に招待しますが、石像は本当に食事に姿を現し、ジョヴァンニに悔い改めることを要求しますが、ジョヴァンニはそれを拒みます。
悔い改めようとしないジョヴァンニは石像の騎士長に地獄に引きずり込まれてしまうのです。
このオペラのクライマックスはドン・ジョヴァンニが自分のせいで死なせてしまった騎士長の像に直面した時で、銅像はドン・ジョヴァンニに懺悔の機会を与えますが彼はそれを拒否し、銅像によって地獄に引きずり込まれてしまうシーンです。
このオペラは喜劇と悲劇が複雑に絡み合い、誘惑、道徳、自分の行動の結果といったテーマを探求していることが特徴です。モーツァルトの音楽は特に印象的で、オペラのレパートリーの中で最も象徴的なアリアやデュエットがいくつも登場します。
1787年の初演以来、数え切れないほど上演され、脚色されてきたこのオペラは現在でも最も人気があり、愛されているオペラの一つです。
モーツァルト作曲「ドン・ジョヴァンニ」前編。最高傑作「ドン・ジョヴァンニ」の見どころをプロが面白く、分かりやすく解説!
前編
後編
モーツァルトの名曲7 モーツァルト:交響曲 第36番 ハ長調 K.425 ≪リンツ≫
Mozart Symphony No.36
交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1783年に作曲した4楽章からなる交響曲で、同年11月にオーストリアのリンツに滞在した際に作曲されたことから「リンツ」の愛称で親しまれています。
1783年の7月下旬、モーツァルトは妻のコンスタンツェを連れて結婚に不満のあった父と妹に和解を求めて会いにザルツブルク向かいました。
父も妹もコンスタンツェのことをモーツァルトとは似合わないと考えていたようで、滞在によりある程度不満は解消しましたが家族の一員として迎え入れまでには至りませんでした。
ウィーンへの帰路、夫妻は家族の古い友人であるトゥーン・ホーエンシュタイン伯爵の招待でリンツに数日滞在しますが、滞在中、公開演奏会の依頼を受け、手持ちの交響曲がなかったモーツァルトは4日間というスピードで新交響曲を作りあげます。
非常に短い時間で作曲した作品にも関わらず、簡潔ではありますが、しっかり作りこまれた作品でした。
その後、この曲は「リンツ」の愛称で親しまれ、モーツァルトの代表的な交響曲の一つとなりました。
モーツァルトが作曲した交響曲の中で、序奏が表情豊かなスローテンポで始まるものは他にはありませんでした。
この交響曲は4つの楽章から構成されています。
第1楽章はアダージョ、アレグロ・スピリトーゾで、スローテンポな序奏で始まりますが明るく元気な雰囲気でテンポも軽快です。
この楽章は勢いがあり、生命力にあふれ主旋律も非常に印象的です。
第2楽章はアンダンテで、ゆっくりとした優しいテンポの緩徐楽章です。
この楽章はこの時代では珍しい曲調で、メロディアスで叙情的であり美しい転調も特徴的です。
第3楽章はメヌエットとトリオで穏やかなテンポの舞曲のような楽章です。この楽章はエレガントで優美であり、魅力的な対位法が特徴的です。
第4楽章はプレストで、速くて活発な曲です。この楽章はエネルギーに満ちており、いくつかの興味深い和声の変化が特徴的です。
モーツァルトの交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」は非常に美しい作品であり、彼の交響曲の中でも最も人気のある作品の一つです。4つの楽章はいずれも非常に印象的で素晴らしいメロディーと興味深い転調を特徴としています。
この作品はその活力と魅力で賞賛され、現代のコンサートでもよく演奏されていることからもモーツァルトの作曲家としての偉大な技量を示すものであり、魅力的で楽しい作品だという証明でもあります。
この「リンツ交響曲」は「ハフナー交響曲」、「ジュピター交響曲」「プラハ交響曲」と並び大きな評価を得られています。
モーツァルトの名曲8 ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K 331
MOZART Piano Sonatas No.11 A Major K.331
ピアノソナタ第11番イ長調K331は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1781年から83年にかけて作曲した古典派で最も愛されているピアノ作品の一つで、旋律の単純さ、リズムの推進力、遊び心のある魅力が特徴のピアノ独奏のための3つの楽章からなるピアノソナタ曲です。
第1楽章アンダンテ・グラツィオーソは穏やかな序奏で始まり、生き生きとしたヴィルトゥオーゾ的な右手の軽快な旋律である主テーマへと導かれ、続いて左手の煽情的な第2主題が現れます。それが右手で繰り返され発展し、左手の伴奏が走るより繊細で遊び心のある部分へ変化します。短い展開の後、2つの主題が再現され、軽快なコーダで楽章は終わります。
続くメヌエットは荘厳かつ優雅でリリカルな旋律が楽章を通して絶えず展開され、主題は右手のシンプルな旋律に左手の軽やかなカウンターメロディが添えられています。
中間部(Bセクション)はより広がりがあり、より複雑な旋律とより精巧な伴奏が特徴で主題の繰り返しと短いコーダで楽章は終わります。
このソナタが特に有名なのはウィーンで流行していたトルコ風の音楽からヒントを得たと言われる最終楽章(第3楽章)の「トルコ風ロンド」です。よく “トルコ行進曲 “と呼ばれます。
左手のリズムと右手のヴィルトゥオーゾ的なパッセージが際立つ生き生きとした盛り上がりを見せるフィナーレです。歯切れのよいリズミカルな伴奏が特徴で、旋律は常に両手の間を行き来しながら展開され、強度を増していき華麗かつ刺激的に作品を締めくくります。
ロンドでは、現代のマーチングバンドの祖先であるトルコのジャニサリーバンドの音を模倣したもので長調のBパートに行進曲のようなブロック・コードの転回があります。
この第3楽章は単独で聴くことも多く、モーツァルトのピアノ曲の中でも最もよく知られた曲の一つです。
モーツァルトのピアノソナタ第11番イ長調K.331は、クラシック音楽の世界を紹介するためによく使われる非常に楽しくて親しみやすい作品です。
穏やかで叙情的なメヌエットから活発でエキサイティングなトルコ風ロンドのフィナーレまで、さまざまな感情を表現しています。作品全体を通して、ヴィルトゥオーゾ的なパッセージと刻々と変化するメロディーは聴く人を飽きさせず楽しませてくれます。
この作品は演奏家にも聴衆にも人気のある作品であり、メロディのシンプルさとリズムの推進力によりアマチュアとプロの両方のピアニストにも最適な作品です。
モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番はまさに不朽の名作であり、レパートリーの定番と言えるでしょう。
モーツァルトの名曲9 クラリネット協奏曲イ長調 K 622
(Mozart Clarinet Concerto in A major K622)
モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調K622は友人でありパトロンであったクラリネット奏者アントン・シュタドラー(ウィーンで最も才能あるクラリネット奏者)のために書かれたもので、モーツァルトの最後の協奏曲と言われており、彼の最高傑作の1つとされています。
シュタドラーのクラリネットは通常のものとは異なり、より低音域のあるバス・クラリネット(バセット・クラリネット)を使用しているため、モーツァルトはシュタドラーの楽器の音域に合わせて作曲しました。
クラリネット協奏曲イ長調K622はクラリネットと室内管弦楽(フルート2、ファゴット2、ホルン2、弦楽器のための3楽章の協奏曲で、抒情性と卓越した技術が融合したクラリネット界の傑作と言われており、ベルンハルト・パウムガルトナーに「その驚くべき暖かな音色、完璧なバランス、比類のない完璧なスタイル」と言わしめたクラリネットのために書かれた最初の大曲として有名です。
曲は3つの楽章で構成されています。
第1楽章はアレグロでソナタ形式で書かれており、第2楽章はアダージョでゆったりとしたテンポで書かれています。最終楽章はロンドで生き生きとしたテンポで書かれています。
クラリネット協奏曲はモーツァルトの作品の中で最も技術的に難しい曲のひとつとされているためソリストは非常に正確かつ機敏に演奏する必要がありますが、美しいメロディーとハーモニーを持つモーツァルトの最も叙情的な作品の一つとも言われています。
第1楽章の曲は弦楽器の叙情的な主題で始まり、それをソリストが受け継ぎますがその後ソリストは複雑なパッセージと急速な速度でヴィルトゥオーゾの旅に出ます。短い間隔の後ソリストは即興的なスタイルで再び主題を演奏します。オーケストラは情熱的な伴奏で応え、カデンツァに至ります。
第2楽章は美しいアダージョで、クラリネットの甘いソロのメロディで始まりオーケストラがメランコリックな伴奏でゆっくりと登場して優しさと哀しみのムードを作り出します。その後よりエネルギッシュなパッセージが続き、ソリストが叙情的で情熱的なテーマで戻ってきます。
第3楽章(最終楽章)は、ソロ・クラリネットが遊び心のあるパッセージを次々と奏でる生き生きとしたロンドです。そしてオーケストラが軽快な伴奏で登場し、ソリストとオーケストラの間で一連のやりとりが行われると、ソリストが華麗なカデンツァを奏でて曲はエキサイティングに締めくくられます。
モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調K622は非常に優れた芸術作品で、モーツァルトが作曲の技術的側面と叙情的側面の両方に精通していることを示す例であり、クラリネットのレパートリーとして不可欠なものとなっています。
この曲は不朽の名作であり、世界中の聴衆に演奏され、楽しまれ続けています。
モーツァルトの名曲10 クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
(Mozart Clarinet quintet K581 in A major)
このクラリネット五重奏K.581はクラリネット協奏曲イ長調K622と同じく、クラリネット奏者アントン・シュタドラーのために作曲された曲です。
モーツァルト唯一のクラリネット五重奏曲で、1本のクラリネットと弦楽四重奏のための作品でもあります。
当時はまだオーケストラの楽器としては珍しくほとんど使用されていませんでしたが、モーツァルトは新しい可能性をクラリネットを用いた楽曲で模範を作りました。
クラリネット、2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための4楽章からなるこの五重奏曲は、シュタドラー五重奏曲(1790年4月の手紙の中でモーツァルトがそう表現している)と呼ばれます。
この曲は1789年、モーツァルトが亡くなるわずか1年前に作曲されました。
モーツァルトが当時比較的新しい楽器であったクラリネットのために書いた唯一の室内楽曲で、楽章は4つで構成されていますが、この古典的な構成とロマンティックな感情の完璧な融合と評されることもあります。
第1楽章はソナタ形式のアレグロです。曲全体を通して繰り返される、強く自信に満ちた主題が特徴的ですが、頻繁に短調に傾き、曲全体に陰影を与えています。
第2楽章は美しいラルゲットで、より叙情的で内省的なスタイルが特徴の緩徐楽章です。
第3楽章はメヌエットで、軽快で遊び心のある舞曲です。
第4楽章は、弾むような軽快な主題が印象的な変奏曲形式で主旋律が曲の中で繰り返されます。
クラリネット五重奏曲は、みずみずしいハーモニーと優雅なメロディーで高く評価されており、クラリネットが曲の中で大きく取り上げられますので、その独特の音色が曲に独特の美しい質感を与えています。
クラリネットの高音域は特に第2楽章で目立ち、低音域は第4楽章でフィーチャーされています。
クラリネット五重奏曲は世界中の偉大な音楽家たちによって演奏・録音されてきた不朽の名作であり、その人気は何世紀にもわたってプロとアマチュアの両方の音楽家から愛され続けています。
その美しさと複雑さは世界中の音楽愛好家に愛されています。モーツァルトの天才ぶりを示すものであり、世代を超えて愛され続ける不朽の名作です。
その美しさ、複雑さ、感情の深さは、モーツァルトが最も愛した作品の1つで、すべての音楽愛好家が体験すべき真の傑作と言えます。
他にも偉大な作品が盛りだくさん過ぎて、困るほど。
モーツァルトが70歳まで生きていたら、いったいどれほどの作品を残したのでしょうか。
さらなる名作を多数生み出していたのでしょうか…。いったいどんな曲なのでしょう。
思いを馳せます。
本物の天才の天才たる所以は凡人の私には分かりませんが、音楽界のレジェンド、今風で言えば神ですね。
モーツァルトの主な情報
誕生 1756年1月27日(ザルツブルク | |
父・レオポルト・モーツァルト | 母・アンナ・マリーア・ペルトル |
結婚 1782年 妻コンスタンツェ | 子供 コンスタンツェとの間に4男2女 |
作曲 1786年 オペラ「フィガロの結婚」 | 作曲 1787年 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」 |
作曲 1787年 アイネ・クライネ・ナハトムジーク | |
死去 1787年5月28日 父レオポルト | 作曲 1790年 オペラ「コジ・ファン・トゥッテ |
作曲 1791年 オペラ「魔笛」 | 作曲 1791年 レクイエム (未完成) |
享年 1791年12月5日(ウィーン) |
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