アルトゥーロ・トスカニーニ
アルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini 1867-1957)は、イタリアの指揮者であり、20世紀で最も有名で影響力のある音楽家の一人です。
史上最も偉大な指揮者の一人として知られており、広く録音されて商業的に成功した最初の指揮者でもあります。ミラノ・スカラ座の音楽監督を25年以上務め、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、ニューヨーク・フィル、NBC交響楽団、BBC交響楽団でも活躍しました。
トスカニーニは厳格な基準と音楽に対する情熱的なアプローチで知られています。
ベートーヴェン、モーツァルト、ヴェルディの作品を情熱的かつ緻密に解釈することで有名であり、このようなクラシックの大作曲家の作品に加え、大指揮者があまり好まないような通俗名曲や小品、現代音楽も好み、ストラヴィンスキーやバルトーク、シェーンベルク、プロコフィエフといった作曲家の作品も多数指揮し、その録音は広く賞賛され、現在でも楽しまれています。
また、オペラの近代化に尽力したことや長命のためにたくさんの音源を残した人物でもあります。
アルトゥーロ・トスカニーニは、1867年にイタリアのパルマで生まれました。
仕立屋の父、洋裁師の母という職人の家に長男として生まれたアルトゥーロ・トスカニーニは、4歳の頃に初めて歌劇場に連れていかれヴェルディの「仮面舞踏会」を聞きますが、それがきっかけで音楽の道を決意し、9歳にしてパルマ王立音楽学校に入学しチェロを学びます。
ここでの教育は厳しいだけでなく寮での生活も過酷で、毎日魚が出たことから後年魚嫌いになったというエピソードすらあります。
このような経験の中、努力によってチェロと作曲、そしてピアノで最高の栄誉を得て首席で卒業したことにより、オペラ会社のオーケストラと契約することに成功します。
そして19歳にして南米のツアーに参加できることになりますが、ここでのトラブルがアルトゥーロ・トスカニーニが指揮者としてデビューするチャンスとなりました。
リオデジャネイロでの演奏会で、地元の指揮者がオーケストラと対立して、その代わりとして急遽アシスタントのコーラスマスターをしていたトスカニーニが氏名を受けます。指揮の経験がなかったトスカニーニでしたが、その音楽性の高さで観衆を魅了し、正式な指揮者としてオーケストラの演奏を任されるに至りました。
イタリアに帰国後の1886年、トスカニーニは指揮者としての活躍だけではなく、オペラへの出演も果たします。
チェロ奏者としてヴェルディが音楽監修を務める「オテロ」にも参加し、ヴェルディ本人から高い評価を得ますが、このころからチェロ奏者よりも指揮者としての実力が認められるようになり、徐々に指揮者を本業とするようになります。
1895年にはトリノにあるレージョ劇場の首席指揮者に就任し、1898年にはスカラ座の首席指揮者にまで上り詰め、イタリア音楽界の巨匠としての地位を確立しました。
さらに1908年には渡米し、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で今日でも実践されているオペラの制作と上演に多くの基準を設定し、社交場と化していたオペラ劇場を芸術鑑賞の場にまで改革しました。
1919年にトスカニーニは、ミラノでファシストの国会議員に立候補しましたが落選します。当事ムッソリーニから「世界で最も偉大な指揮者」と呼ばれるなど関係を持っていたからです。ただ、トスカニーニは、1922年10月のローマでの行進の前にすでにファシズムに幻滅し、ムッソリーニと対立を深めていきます。
このような経緯から、1926年に渡米してニューヨークフィルの指揮者も務めるようになりますが、しばしばイタリアでも活動を続けており、1931年ムッソリーニの演奏依頼を拒否したことがきっかけで帰り道に暴行されるなど危険な目にも遭いました。
同時にニューヨークフィルを辞任して引退も考え始めていたころ、ラジオ コーポレーション オブ アメリカの社長であるデイビッド サーノフがラジオ コンサート用の交響楽団を創設するためにトスカニーニを招聘します。
これがトスカニーニの生涯の楽団であるNBC交響楽団です。
1939年に第二次世界大戦が発生すると、トスカニーニはイタリアを去り、精力的に放送コンサートを主宰し、成功を収めました。
戦後は、いち早く爆撃で破壊されたスカラ座の再開演奏会で指揮を務め、再びイタリアでも活躍をするのです。
その後、1954年にNBC交響楽団を率いて米国やヨーロッパを渡り歩き、1954年にカーネギー・ホールでNBC響と最終演奏会を行って引退します。
1957年ニューヨーク市の自宅で脳血栓により死去、89歳でした。
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大指揮者トスカニーニ!偉大な理由!トスカニーニの生涯と名盤など、その魅力をたっぷり紹介します!
音楽家の車田和寿氏のトスカニーニについての紹介動画
アルトゥーロ・トスカニーニの名盤・名演
・ベートーヴェン : 交響曲第3番変ホ長調Op.55 「英雄」
1枚目は、1953年のカーネギーホールにて自身のために設立されたNBC交響楽団の演奏によるベートーヴェン作品を収録したアルバムです。
交響曲第3番「英雄」、交響曲第4番がアルトゥーロ・トスカニーニの手によって指揮されています。
特にエロイカ(交響曲第3番の別名)の指揮に高い評価を得ており、緊迫感やベートーヴェンの表現を即物的にしているといった意見があります。
カップリングされた4番も燃えるような演奏という表現がマッチする情熱的な指揮です。
・ファイナルコンサート – ワーグナー・プログラム
2枚目は「白鳥の歌」として知られる最後の公開演奏会を収録した名盤です。
「ローエングリン」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」といった神々をモチーフにした曲の指揮は慣れたNBC響だからこそできるものといえるでしょう。
ワーグナー楽曲を自身の力で最大限表現した渾身の一枚です。
リマスターによって聞きやすくなっている点もポイントです。
・レスピーギ:ローマ三部作~ローマの松、ローマの噴水&ローマの祭り
最後がトスカニーニ最高の名演の名盤といわれるローマ三部作です。
モノラル録音ながらも音質は良好に録音している点も魅力ですが、それ以上にアルトゥーロ・トスカニーニの指揮が鮮明に伝わってくるディスクと言えます。
小手先ではなく、純粋に自身の実力を見せつけるような指揮は、耳を打ち抜き、心も揺り動かすようです。
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トスカニーニの名演動画
ヴェルディ:「運命の力」序曲
「運命の力」序曲は、ジュゼッペ・ヴェルディの作品の中でも特に人気が高く、クラシック音楽の中でも最も演奏頻度の高い曲の一つです。
1862年にロシア・サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で初演され、現在でもオペラのレパートリーの定番となっています。序曲は、ペーソスや感情に満ちた劇的で刺激的な作品で、同名のオペラ公演の紹介に使われることも多い楽曲です。
トスカニーニによる序曲の演奏は、この作品の最高の演奏のひとつとされており、そのエネルギーと激しさで有名です。
トスカニーニが大編成のオーケストラを使い、ダイナミックで力強いテンポで演奏したこの曲は、この作品の最もドラマチックでエキサイティングな演奏の1つで、コンサートのオープニングに使われることも多く、世界中の音楽愛好家に愛されています。
ベートーヴェン:交響曲第9番 1948年NBCテレビ公演 ライブ RESTORED IN STEREO
ベートーヴェンの交響曲第9番は、クラシック音楽を代表する曲の一つで、1824年に作曲され、同年5月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。
第4楽章と最終楽章に声楽パートが使用されていることから、「合唱」交響曲と呼ばれることもある作品です。
トスカニーニが演奏したベートーヴェンの交響曲第9番は、1948年にNBCテレビで放送されましたが、これは、アメリカでテレビ放映された最初のクラシック音楽の演奏の一つとなります。
トスカニーニはNBC交響楽団を指揮し、交響曲、及び200人の歌手による合唱を披露したこの演奏は広く賞賛され、この曲の最も印象的な演奏のひとつとされています。
ベートーヴェン:交響曲第7番(1936年)NYP
ベートーヴェンの交響曲第7番は、彼の最も人気のある交響曲の一つであり、交響曲のレパートリーの中で最も偉大な傑作の一つとして広く知られています。この曲は1813年にウィーンで初演され、大成功を収めました。
1936年の交響曲第7番の演奏は、イタリアの伝説的な指揮者アルトゥーロ・トスカニーニが指揮しました。トスカニーニは20世紀で最も影響力のある指揮者の一人で、偉大なクラシック作品の情熱的で綿密な解釈で記憶されています。
この演奏は、ベートーヴェンの交響曲の中で最も偉大な演奏のひとつとされており、この録音は商業的にリリースされ、それ以来クラシック音楽愛好家の間で古典的でオーソドックスなものとなっています。
この演奏は、爽快なエネルギーと力強いクライマックスで広く賞賛されており、トスカニーニの解釈は「忘れられない経験」と評されています。
レスピーギ:ローマの松(NBC交響楽団 1952年テレビ放送)
オットリーノ・レスピーギの『ローマの松』は、オーケストラのための4楽章の交響詩です。
1924年に作曲され、同年、ローマのアウグステオ楽堂で初演されました。ボルゲーゼ荘の庭園に響く夜明けの鳥の合唱や、古代ローマ兵の凱旋行進曲など、イタリアの首都の風景や音を想起させる作品です。
1952年、イタリアの名指揮者アルトゥーロ・トスカニーニとNBC交響楽団は、この作品をテレビ放送で演奏しました。トスカニーニの解釈は、その美しさ、激しさ、細部へのこだわりで絶賛されました。
この演奏は、ローマ時代の風景を生き生きと描き、第4楽章 “アッピア街道の松 “の壮大なクライマックスで、喚起的なイメージを与えたと賞賛され、この演奏により、レスピーギの「ローマの松」は、20世紀を代表する作品として確固たる地位を築きました。
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