- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
- J.S.バッハの名曲10選
- J.S.バッハの名曲1 管弦楽組曲第3番 BWV1068「G線上のアリア」
- J.S.バッハの名曲2 主よ、人の望みの喜びよ BWV147
- J.S.バッハの名曲3 小フーガ ト短調 BWV578
- J.S.バッハの名曲4 トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
- J.S.バッハの名曲5 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
- J.S.バッハの名曲6 チェンバロ協奏曲 ニ短調 BWV1052
- J.S.バッハの名曲7 ゴルードベルク変奏曲 BWV988
- J.S.バッハの名曲8 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 シャコンヌ
- J.S.バッハの名曲9 ブランデンブルグ協奏曲
- J.S.バッハの名曲10 平均律クラヴィーア曲集第1巻 ハ長調 BWV846
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, (1685年3月31日 – 1750年7月28日) は18世紀、ドイツの後期バロック時代の作曲家・音楽家として、その音楽性と革新的な様式で活躍しました。
音楽家の家系であったバッハ一族の中でも最も重要な存在(大バッハとも呼ばれる)で、オルガニスト・演奏家・作曲家として卓越した才能があり、独創的で力強く創造的でした。
管弦楽(ブランデンブルク協奏曲など)から器楽曲(チェロ組曲など)、鍵盤楽曲(ゴルドベルク変奏曲、平均律クラヴィーア曲集など)、オルガン作品(シュープラー・コラール集(オルガンコラール)、トッカータとフーガニ短調など)や声楽曲(聖マタイ受難曲、ロ短調ミサなど)など同時代の様々なジャンルで名曲を作り出しています。
バッハの音楽は哲学的な深さを持つ複雑なコンストラクションを兼ね備えながらも宗教的な色彩や抒情性を帯びており、その芸術性と精妙さを誇るような非常に難解な和声が特徴的です。
和声の構造的には基本的なトニック・サブドミナント・ドミナントを中心としていますが、非常に複雑な和音の構成を用いて、さまざまな音楽的表現を作り出しました。
音楽は細部まで洗練されているため非常に美しくメロディアスであり、アレンジの考え方も革新的です。その作品は単純な旋律を持つシンプルな曲から複雑な和声を用いた壮大なオーケストラ作品まで、多くの形態を取り入れています。
バッハは優れた知性を持ち、技術や芸術性も非常に高く、多くの人達はバロック最大の作曲家、史上最高の作曲家の一人として見なしています。
生涯で1087曲もの作品を残しており、日本の音楽教育では「音楽の父」とも言われています。
もし、バッハが生まれてこなかったら。。世界の音楽の発展は大きく遅れてしまったかもしれません。
クラシック音楽の歴史の中でも、まさに最高クラスの天才の一人です。
J.S.バッハについての解説動画
J.S.バッハの代表曲
バッハの代表曲には抒情的なメロディーや階段状のモティーフ、旋律の変化や精緻なフィーリングなどがあり、基本的な間折りの技術と変形的な編曲技法を融合させた大胆な展開が特徴的です。
その音楽は活気あるリズムや基本的なハーモニー、細部にわたる芸術性の複雑さを特徴としています。
また、バッハの音楽には抑揚のあるメロディや思わせぶりな響きのカンタータなど、そのハーモニーは非常に洗練されており、精神性や力強さや心の深い喜び、熱意や礼拝など神聖な意味をも表現する力があります。
それは雲の上の光の中から天使が舞い降りてくるような光景や、恒久の時間を感じられるような神聖な安息とも言える感覚をバッハの楽曲から感じることができます。
バッハの作品にはゆったりとしたゆらゆらとしたリズムが多く用いられており、聴いている人を穏やかな気分にさせてくれます。
美しく複雑なハーモニーと絶妙なテンポの変化を兼ね備えた独特の音楽性から、多くの人々に愛されており、誰しも一度は聞いたことがあるような名曲が沢山あります。
バッハの代表曲一覧
教会カンタータ BWV1‐BWV200,1083 | ・キリストは死の縄目につながれたりBWV4 ・「泣き、嘆き、憂い、慄き」BWV12 ・わが心には憂い多かりきBWV21 ・いざ来ませ、異邦人の救い主よBWV61 ・われらが神は堅き砦BWV80 ・神の時こそいと良き時BWV106 ・目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声BWV140 ・心と口と行いと生活でBWV147 ・天の王よ、よくぞ来ませりBWV182 |
世俗カンタータ BWV201‐BWV217 | ・侯妃よ、願わくばなお一条の光をBWV198 ・わが心は血の海に泳ぐBWV199 ・しりぞけ、もの悲しき影BWV202 ・楽しき狩こそ我が悦びBWV208 ・おしゃべりはやめて、お静かにBWV2011 ・わしらの新しいご領主にBWV212 |
モテット (BWV118),BWV225‐BWV231 | ・イエス、我が喜びよBWV227 ・来たれ、イエス、来たれBWV229 |
ミサ曲・マニフィカト BWV232‐BWV243 | ・ミサ・ロ短調BWV232 ・マニフィカト ニ長調BWV243 |
受難曲 BWV244‐BWV247 | ・マタイ受難曲BWV244 ・ヨハネ受難曲BWV245 |
オラトリオ BWV248-BWV249 | ・クリスマス・オラトリオBWV248 |
コラール BWV250-BWV438 | ・4声コラールBWV253-BWV438 |
歌曲、アリア BWV439‐BWV524 | ・シェメッリ賛美歌集BWV439 – BWV507 |
オルガン曲 BWV525‐BWV771 | ・トリオ・ソナタ第5番 ハ長調BWV529 ・トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 ・幻想曲と大フーガ ト短調 BWV 542 ・前奏曲とフーガ ホ短調』 BWV548 ・小フーガ ト短調 BWV 578 ・トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV 564 ・幻想曲(前奏曲)とフーガ ト短調』BWV542 ・『パッサカリアとフーガ』ハ短調BWV582 ・前奏曲とフーガ』変ホ長調BWV552 ・『トッカータ、アダージョとフーガ』 ハ長調BWV564 |
クラヴィーア曲 BWV772‐BWV994 | ・平均律クラヴィーア曲集第1巻 より「プレリュード」BWV 846 ・メヌエット ト長調 BWV Anh.114 ・イタリア協奏曲 ヘ長調 971 ・パルティータ第1番 BWV825 ・ゴルトベルク変奏曲 BWV988より”アリア” ・半音階的幻想曲とフーガ BWV903 ・フランス組曲第5番 BWV816より”アルマンド” |
室内楽曲 BWV1001‐BWV1070 | ・フルートとチェンバロのためのソナタ第2番 変ホ長調BWV1031 ・無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV1001 ・無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調BWV1004 ・無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006 ・無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調BWV1007 ・無伴奏フルート・ソナタ イ短調 BWV1013 |
協奏曲 BWV1041-BWV1065 | ・チェンバロ協奏曲 ニ短調 BWV1052 ・チェンバロ協奏曲 ヘ短調 BWV1056 ・ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042 ・2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043 ・ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 BWV1041 ・ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 BWV1046 ・ブランデンブルク協奏曲第3番 ト長調 BWV1048 ・ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV1050 ・ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 ハ短調 BWV1060 |
管弦楽組曲 BWV1066-BWV1071 | ・管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067 ・『G線上のアリア』 管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068 |
・カンタータ等 (BWV 1-524)
バッハは、バロック期に詩を音楽に託した詩歌の創造的な新しい形態を、カンタータ(器楽の伴奏を伴う声楽のための楽曲)と呼ばれる形式で構築しました。
バッハのカンタータは作曲技術や構築的な手法、そして彼の複雑な楽曲の中にある精神性を表しており、基本的に単一の詩から構成されています。詩のテーマは通常、ルードルシュタット詩華撰のような神への賛美を歌うものです。カンタータはテーマについて語る詩と、詩の構成要素を表現する音楽の2つの部分から構成されています。
詩はバッハが選んだ詩人の書く詩の歌詞を使用し、関連するテーマを取り上げる様々な形式の詩を選んでその意味を音楽で表現しました。 バッハのカンタータは、様々な楽器で演奏されることが多く、歌手やアンサンブルなどの他の楽器を組み合わせることもあります。
バッハのカンタータは、その様々な形式の繰り返しや終止符、複雑なハーモニーなどの技術的な要素において、他の作曲家の作品に比べて非常に複雑なものになっています
・オルガン曲等 (BWV 525-771)
J.S.バッハのオルガン曲は美しく洗練されたハーモニーとリズムによって特徴付けられており、美しさと高い技巧を兼ね備えている楽曲はその芸術性と作曲術の素晴らしさを存分に発揮しています。
その中でも『トッカータとフーガ』や『パッサカリア』などは、特に高い評価を受けています。
バッハ独特の変奏技法を用い、現代的な音楽表現を実現しているからです。
バッハは古典派とバロック派を結びつけるべく、古典的な楽曲構成と新しい和声的な表現を組み合わせや自由な表現を追求しました。
また、バッハは単調な音域を超える技巧的な演奏を要求されるプレリュードとフーガの作品を多く作曲しています。そこで複雑な和声や高い技巧性、革新的な表現を活用することでオルガン曲の創造性を高めています。
バッハのオルガン曲は素晴らしい作曲術を持ち、古典派とバロック派の芸術性を融合した魅力的な楽曲を提供しています。その美しい楽曲は全ての人にとって心に深い印象を残します。
・クラヴィーア曲等 (BWV 772-994)
J.S.バッハのクラヴィーア曲はクラヴィーアという形式を完成させたといわれています。
クラヴィーアとは楽譜や和声的な特徴を持つという意味で、バッハの奏法の中で最も神秘的な形式のひとつとして見られています。
バッハのクラヴィーア曲は深遠で美しいメロディーと精妙な和声を用いて構築されています。
そして、それらを組み合わせることで聴衆を深い感動に包み込んでくれます。
また、細かな弦楽器のパートを用いて完璧なハーモニーを奏でることができるのはバッハの技術の高さを表しているものです。
今日でも一度聴いたら忘れられない素晴らしい音楽として多くの人々の愛される曲となっています。バッハのクラヴィーア曲は時を超えて魅力的な音楽であるということがよく表れていると言えるでしょう。
・リュート曲 (BWV 995 -1000)
J.S.バッハのリュート曲はその美しさや繊細な音色で多くの人々を魅了しています。
彼の作品はヨーロッパの伝統的な音楽手法を組み合わせたものであり、クラシックからジャズまであらゆる音楽ジャンルに影響を与えています。
また、バッハのリュート曲は手元で弾いても楽しめる程度であるため、多くの人が楽しむことができます。華麗で美しいメロディーと深い響きが特徴的なバッハのリュート曲は人々を魅了し続けています。
・室内楽曲 (BWV 1001-1040)
J.S.バッハの室内楽曲は芸術的な才能が最も華麗に表現されていると言われており、その美しいメロディーと技巧的な構成は今日まで多くの演奏家たちを魅了し続けています。
一般的にバッハの室内楽曲は細部にわたる優美な細密な構造を有していることが特徴です。
それらの楽曲の中には多くの創造性や複雑さが組み込まれています。
また、大胆な演奏法を求められますが、他の楽器などとの融合も可能な強力な特性を備えていると言われています。それらはどんな演奏家でも楽しんだり挑戦したりできる楽曲なのです。
・協奏曲・管弦楽曲 (BWV 1040-1071)
J.S.バッハの協奏曲はオーケストラの多彩さとソリストの技術を調和させた素晴らしい演奏技術を備えています。
協奏曲はバッハ自身の楽曲としても知られていますが、時代を超えて多くの作曲家や指揮者から熱狂的な支持を受けています。協奏曲の独特な魅力は完璧なバランスで織り成された主題と変奏の流れです。
それぞれの楽器による協奏がお互いを補完するように溶け合い、まるで一つの楽曲となっているような感覚を演出します。また、バッハの歴史的背景を考慮すると協奏曲が実際に生み出された時代を考慮しながら独特の楽曲を完成させたことが今なお多くの人々を魅了しています。
J.S.バッハはその作品に深い哲学的な深みを見せる革新的な作曲家であり、音楽史において重要な役割を果たしました。バッハの管弦楽曲はその芸術性、音楽的な美しさ、技術的な完成度によって彼の他の作品を凌駕しています。
バッハの管弦楽曲は高度な技術的な技術と多様な表現技法を結びつけた一体の複雑な構成によって構成されており、それらは繊細な展開や明瞭な層構造を備え、独自の世界観を示しています。優れたオーケストレーションを用いて展開されており、繊細なメロディーとリズムを組み合わせて、聴衆を楽しませる効果をもたらします。そのためバッハの管弦楽曲は多くの人々に影響を与え続けている最高の作品の一つとして認識されています。
・特殊作品 (BWV 1072-1087)
J.S.バッハの特殊作品の『音楽の捧げもの』と『フーガの技法』は、卓越した技術力と芸術性、独特な個性を備えた作品として有名です。
彼の作品には多くの特徴がありますが、その中でも特に注目すべき点の1つはハーモニーとメロディー、そしてリズムを絶妙に組み合わせることができる点です。そのため、バッハの楽曲は聴く人の心を揺さぶる絶妙な音楽表現を提供することができます。
また、バッハの作品は普遍的なモチーフを用いて非常に洗練された音楽を構成している点も注目すべきところです。バッハの楽曲には音楽史上に確固たる存在感があり、聴く人の心を震わせるような特別な独自性を備えているため多くの音楽家たちに愛され続けています。
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J.S.バッハの名曲10選
ここでご紹介するJ.S.バッハの名曲10選はおこがましくも管理人の独断と偏見によりセレクトしています。ご理解の上、お楽しみください。
※順不同
Bach : Orchestral Suite No.3 in D major, BWV.1068
J.S.バッハの名曲1 管弦楽組曲第3番 BWV1068「G線上のアリア」
この曲はクラシック音楽の中でも特に有名な名曲の一つですが、J,S,バッハが1717年から1723年にかけて、アンハルト公レオポルトのために書いた管弦楽組曲です。
多くの人達は「G線上のアリア」として認識していますが、J.S.バッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2楽章を1871年にアウグスト・ヴィルヘルミが編曲したものであることはご存じでしたでしょうか?
ヴィルヘルミが編曲した「G線上のアリア」はハ長調の曲は、原曲よりも1オクターブ低い音程で、1本のヴァイオリンのみで演奏されます。
しかも最低弦であるG線で全旋律を奏でる独奏ヴァイオリン曲で、独特の哀愁ある曲になります。
皆さんの耳に残っている曲で言えば原曲のバッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2楽章だと思いますが、曲の名前はハ長調の「G線上のアリア」が有名になっているという少し面白い形になっています。
原曲の管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2楽章は、雨上がりの雲の隙間から穏やかに太陽の光が差してくるような神々しく非常に美しい音色をも感じるような曲です。
ヴィルへルミ編曲のハ長調の曲「G線上のアリア」は、夕暮れ・黄昏時に感じるもの悲しさや切なさを感じ、心の中に響く哀愁ある音色です。
好みの分かれるところですが、表情が異なっていてもどちらも心に残る最高レベルの感動を得られます。動画は管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068の第2楽章です。
【名曲解説動画】G線上って何?バッハの名曲!G線上のアリアを簡単解説!あのパッヘルベルのカノンとも繋がりが?管弦楽組曲第3番
J.S.バッハの名曲2 主よ、人の望みの喜びよ BWV147
Jesus bleibet meine Freude BWV147
バロック音楽おける最も有名な曲と言えば、J.S.バッハが1723年に作曲したカンタータ、「主よ、人の望みの喜びよ」を挙げる人も多いと思います。
結婚式や聖なる日、イースターのお祝いなどでオルガンやピアノ、ギター、チェロで演奏され歌われるこの賛美歌はクリスチャンでなくても聞いたことがある曲だと思います。
「イエズスよ、人の望みの喜びよ、聖なる知恵よ、最も明るい愛よ、汝によって我々の魂は熱望され、創造されざる光に舞い上がる」
可憐さ、愛らしい曲調とともに美しく敬虔な心情が語られています。
J.S.バッハは1661年にマルティン・ヤヌスが書いた賛美歌「Jesu, meiner Seelen Wonne」の2つのスタンザを独立したオーケストラ伴奏で4部構成にし、バイオリニストであり作曲家のヨハン・ショップのメロディ「Werde munter, mein Gemüthe」に乗せました。
イエズスよ、人の望む喜びよ。
聖なる知恵よ、最も輝かしい愛よ。
あなたに引き寄せられ、私たちの魂は熱望する。
創造されざる光へ舞い上がれ
神の言葉、私たちの肉体を創り出した。
命の炎を燃やしながら
未知の真理にむかって、なおも邁進する。
汝の玉座の周りに舞い上がり、死につつある。
希望が導く道を
聞け、どんな平和な音楽が鳴り響くのか。
群れは、あなたを信じている。
死のない泉から喜びを飲む。
彼らは美の最も美しい喜びである。
彼らは知恵の最も神聖な宝である。
汝は常に汝自身を導き
未知の喜びの愛の中で
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J.S.バッハの名曲3 小フーガ ト短調 BWV578
J.S Bach: Little Fugue in G-minor BWV578
J.S.バッハのフーガ ト短調 BWV578は小フーガと呼ばれ、アルンシュタット時代(1703-1707)に作曲したオルガン曲で最も有名な曲の一つです。後の作曲された壮大なフーガ曲「幻想曲とフーガ ト短調(大フーガ)BWV 542 」との混同をさけるために「小フーガ」のタイトルを付けたと言われています。
フーガ中の4小節半の主題はレオポルド・ストコフスキーによる編曲作品が当時好評を得ており、その後も多くの作品に影響を与えています。
オルガンのために書かれたこの曲は厳格な3部形式による4声のフーガで、バロック音楽の中でも最も研究され演奏されている曲の一つでもあり、弦楽器・ピアノ・金管楽器など多くの楽器のために編曲されています。
フーガはトニック・コードのト短調で主テーマを述べることから始まりますが、この主題は短く印象的で上昇する音列がこの曲の調性を確立しています。
主題の最初の入りに続いてドミナント・モーションのニ短調の対主題が入力されており、より緊張感を与えながら主テーマとのコントラストをつけるのに効果的に作用しています。
その後フーガは主題と対主題の模倣と連続によって進行します。
この連続は様々な転回、移調、対位法によってますます複雑になっていき、フーガの進行に伴いながら主題も転回や減音など様々な形で展開されます。
フーガはやがて最終回でクライマックスを迎えますが主題が原調で提示され、その後コーダが続きます。
コーダでは対位法と転調の連続が延長されますが、フーガはトニック・モーションで幕を閉じます。
バッハの小フーガ ト短調はバッハの対位法の達人ぶりを示す一例と言えます。
その簡潔さとシンプルな旋律は対位法を学ぶ者にとって理想的な曲であり、その人気は多くのコンサートやレコーディングで定番となっています。特にパイプオルガンでの演奏は曲調に非常にマッチしており、優雅なで神聖な音色が鮮やかに流れる様はカテドラルでの荘厳な雰囲気の中を神々しい光が差し込むようです。
この曲はバッハの天才的な才能を証明するものであり、その遺産は後世の音楽家たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。
J.S.バッハの名曲4 トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」BWV565は、J.S.バッハ(1685-1750)が作曲した※オルガン曲で、バロック時代の最も有名で影響力のある作品の1つです。
1708年以前に作曲されたこの曲はフランスの序曲、イタリアのトッカータ、ドイツのフーガの要素を取り入れてニ短調の調性をヴィルトゥオージックかつドラマチックに表現しています。
冒頭のトッカータは即興的で自由な形式の楽章であり、速いテンポと技術的な難しさがありながらも執拗でドライブ感のあるリズムと滝のような音符の乱舞が特徴です。
この部分は予想外の和声のひねりが多く、作品にドラマとサスペンスの感覚を与えています。
トッカータに続くのはコントラプンタルの作曲形式であるフーガです。
フーガの主題はオルガンのペダルポイント(バロック時代によく使われた通奏低音の事)によって導入され、それはこのセクションを通して継続された後に対主題が導入されることでいくつかのエピソードが続き、主テーマとは対照的なものとなります。
フーガは激しさを増しながら、やがてクライマックスに達して再びペダルポイントに戻ります。
この曲はバロック音楽の傑作であり、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスといった後世の作曲家たちの作品にもその影響が見られます。
また、ウォルト・ディズニーの『ファンタジア』で特に有名になり、オルガン曲の中でも人気の曲となりました。
日本では印象的な響きのトッカータの冒頭の部分がパロディやパロディ・ソングなどで使用されていて親しみがある方も多いかもしれません。
※なお、この曲がバッハの作品であるかどうかの真偽はまだ証明されておらず、研究者の中でも議論されています。
J.S.バッハの名曲5 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
Cello Suite No. 1 in G major, BWV 1007
バッハの無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007はバロック時代の名作で、クラシック音楽のレパートリーの中でも最も有名で愛されている無伴奏チェロのための作品のひとつです。
チェロは人の音域に最も近い楽器の一つで癒しの音色を持っており、独特のリズムの中の癒しの音色は、アルペジオ和音を主体とした前奏曲は聞き心地が良く、素朴さと気品を感じるチェロ独奏の落ち着いた響きが心を満たしてくれます。
1720年前後(正確には分かっていない)に作曲されたこの曲は、それぞれ異なる調の6つの楽章で構成されています。
その楽章とは 前奏曲(プレリュード4分の4拍子)、アルマンド(2分の2拍子)、クーラント(4分の3拍子)、サラバンド(4分の3拍子)、メヌエット(4分の3拍子)IとII、そしてジーグ(8分の6拍子)です。
前奏曲は主テーマを力強く宣言して始まり、バッハの天才的な作曲能力を示す生き生きとした名人芸へと急速に流れます。続くアルマンドはより深刻で内省的なムードが漂い、クーラントはリズムとハーモニーの複雑な相互作用を特徴とし、より速く、より明るいダンスのような楽章になります。サラバンドは、高音域の旋律が特徴的な、ゆったりとした楽章です。メヌエットはバロック時代の宮廷舞曲として親しまれた2つのメヌエットです。ジーグは最終楽章で、活気に満ちた明るいテンポと複雑かつ魅惑的なメロディーラインを特徴としています。
この曲は世界で最も有名なチェリストたちによって演奏・録音されており、無伴奏チェロのレパートリーの指標としてヴァイオリンやギターなど他の楽器のために書き起こされています。
冒頭の入りの旋律を聞いただけでチェロの奥深い響きと独特の空間に酔いしれてしまいます。
無伴奏チェロ組曲第1番はその美しさ、複雑さ、感情的な力強さで賞賛されており、バッハがバロック様式を巧みに操り、並外れた美しさと深みを持つ音楽を作り上げる比類なき能力を完璧に表しています。この曲はバッハの天才の証であり、クラシック音楽のレパートリーとして愛されている傑作です。
【無伴奏チェロ組曲】バッハのもう一つの傑作!無伴奏チェロ組曲の魅力を紹介!無伴奏チェロの特徴は?ポリフォニーって何?
J.S.バッハの名曲6 チェンバロ協奏曲 ニ短調 BWV1052
チェンバロ協奏曲ニ短調BWV1052はバッハの最も有名で愛されている曲の一つです。
J.S.バッハが作曲したチェンバロ協奏曲はヴァイオリンを主とした旋律楽器のために書かれたものを鍵盤楽器向けに再編集したものと考えられています。
アレグロ、アダージョ、アレグロと記された3つの楽章で構成されており、チェンバロとバロック弦楽合奏(2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、通奏低音)で主に演奏されます。
バッハのチェンバロ協奏曲BWV1052-1065の中でもBWV1052が最も印象的で有名です。
バッハのチェンバロ協奏曲ニ短調のアレグロは複雑なリズムと広いダイナミックレベルを持つ生き生きとしたエネルギッシュな楽章です。
チェンバロのソロはこの楽章の主役で、ヴィルトゥオーゾ的なパッセージと複雑な装飾で頻繁に主導権を握っており、伴奏弦楽は弦楽器が担当してチェンバロのソロに美しいハーモニーの背景を与えています。
アダージョはより落ち着いたより内省的な楽章です。
ここでは弦楽器が主役となり、美しく雰囲気のあるメロディーをチェンバロと木管楽器が伴奏します。この楽章は感情と美しさに満ちており、チェンバロのソロは特に心に響くものがあります。
最後のアレグロは生き生きとした気迫のある楽章です。
チェンバロが再び主役となり、他の楽器が伴奏を担当します。
この楽章はエネルギーと興奮に満ちており、ソリストのための多くの名人芸的なパッセージを備えています。
ピアノが広く普及する数十年前から鍵盤協奏曲は作曲されていますが、チェンバロのための協奏曲ではJ.S.バッハはブランデンブルク協奏曲第5番の成功もあり、このジャンルでパイオニアとなりました。
バッハのチェンバロ協奏曲ニ短調BWV1052は複雑なリズム、複雑な装飾、そして美しいメロディーを組み合わせたバロック音楽の傑作であり、長年にわたって聴衆を楽しませてくれることでしょう。
ピアノ版
J.S.バッハの名曲7 ゴルードベルク変奏曲 BWV988
Goldberg-Variationen
ゴールドベルク変奏曲の誕生には逸話があります。
ザクセン選帝侯の元ロシア大使であるカイザーリング伯爵は不眠症に悩んでおり、眠れない夜のためにクラヴィーア曲をいくつかほしいとバッハに依頼しました。
バッハは眠れない夜のためには変奏曲が最適だと考え、選んだ曲がありました。
カイザーリング伯爵には知人であるヨハン・ゴットリープ・ゴールドクというドイツのヴィルトゥオーゾハープシコード奏者と称される超絶技巧の鍵盤奏者がおり、伯爵の眠れない夜にゴルトベルクはバッハからの曲を繰り返し演奏したと言います。
その曲はこのゴールドベルクが初めて演奏したことにより、ゴルトベルク変奏曲と言われるようになったと言います。
曲は全部で32曲(32小節から成るアリアが最初と最後に配置され、その前後のアリアの間に30の変奏曲が展開されています。)で構成されています。
バッハはこのアリアを主題として複雑な対位法的作品からバロック舞曲風の簡素な作品まで、さまざまな変奏曲群を選びました。変奏曲は15曲ずつ2つの部分に分かれますが、前半の部分はより対位法的で、後半の部分はより旋律的で即興的なスタイルになっており、最後の変奏曲としてアリアが繰り返される形になっています。
ゴルトベルク変奏曲はその音楽的、技術的な複雑さ、美しさが評価されています。
オリジナルと編曲の両方で多くのアーティストによって演奏されていますが、変奏曲は和声的、主題的、形式的機能的など、さまざまな音楽的観点からも分析されています。
変奏曲にはバッハが用いた対位法(ポリフォニー)と呼ばれる2つ以上の独立した旋律線を織り交ぜた手法が多く用いられています。この技法は緊張感を生み出すために使われることが多く、声部が揃うことで高い効果を得ることができます。ゴルトベルク変奏曲でもバッハはさまざまな和声や半音階を駆使してドラマや情感を表現しています。
変奏曲の形式も注目すべき点で、第1部はアリアに対する変奏曲でそれぞれ異なる調で構成されています。そして第2部では同じテーマによる対位法的な変奏曲が続きますが、この構成は「ストレット」と呼ばれ、作品全体に激しさと動きのある効果を生み出しています。
複雑で美しいこの作品は時の試練にも耐え、演奏家にも聴衆にも愛され続けており、この変奏曲の複雑な対位法、形式、半音階の組み合わせは時代を超えた傑作を生み出し、何世代もの聴衆にインスピレーションと喜びを与え続けています。
【名曲解説動画】バッハの大傑作!ゴールドベルク変奏曲の魅力を解説!聞き出したら止まらない!その仕掛けとは?
J.S.バッハの名曲8 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 シャコンヌ
Violin partita no. 2 in D minor, BWV1004: Chaconne
「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004」の最終楽章「シャコンヌ」
「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調」は5楽章からなり、1楽章は「アルマンド」、2楽章は「クーラント」、3楽章は「サラバンド」、4楽章は「ジーグ」、最終5楽章が「シャコンヌ」です。
ヴァイオリン1本だけで非常に印象的な旋律、驚くほどの展開と曲の構成はバッハの代表曲の一角といっても過言ではないでしょう。
「シャコンヌ」は音楽の形式名でしかありませんが、現在では「シャコンヌ」と言えば「バッハのシャコンヌ」というほど定着しています。
バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004シャコンヌはバロック時代の最高傑作の一つです。
三拍子で演奏される舞曲の一種で複雑で洗練された作品ですが、当時流行していた舞曲の一種であるシャコンヌの形式をとっており、和声進行の繰り返しとその繰り返しの上での変奏から構成されています。
曲は序奏で始まり、3拍子のゆったりとした荘厳な前奏曲となります。この序奏は曲の雰囲気を作り、シャコンヌの主旋律を導入しています。
序奏の後シャコンヌの主テーマが聴かれますが、この主題は二弦による8小節の単純なフレーズで32回繰り返され、その都度変奏が加えられます。
この変奏曲は複雑で難易度が高く、バッハの作曲家としての技量が発揮されています。
バッハのパルティータ第2番ニ短調は独奏ヴァイオリンのために書かれた史上最高の作品のひとつとされています。この曲は複雑に構成されたパッセージ、ヴィルトゥオーゾ的なテクニック、そして美しいメロディーラインに満ちています。この曲は、演奏者に多大な技術力と音楽性を要求する厳しい作品でもあります。
シャコンヌはバロック時代の代表的な作品であり、作曲以来多くの作曲家によって引用されてきました。ピアノ、オルガン、ギターなど、多くの楽器のために書き起こされていますが、多くの映画音楽にも使用されているように、クラシックギタリストやヴァイオリニストにも大変人気のある曲です。
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004シャコンヌは、バッハがバロック様式に精通していることを示す不朽の名作で、その複雑さ、美しさ、名人芸はこれまでに書かれた音楽の中で最も偉大な作品の1つです。
J.S.バッハの名曲9 ブランデンブルグ協奏曲
Brandenburg Concerto
J.S.バッハの『ブランデンブルク協奏曲』(BWV 1046-1051)は1721年に作曲され、ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈された全6曲からなる作品で、バロック音楽の最高レベルの合奏協奏曲集として知られています。
理由は不明ですが、ブランデンブルク辺境伯がバッハに感謝することも対価を支払うこともなかったといいます。
ブランデンブルク協奏曲は、コンチェルト・グロッソ、イタリアのソナタ・ダ・キエザ、フランスの序曲の要素を取り入れたとも言われ、音楽形式の発展における大きな転機となった作品です。
バッハの最も影響力のある作品として広く知られており、バロック音楽のレパートリーの中で最も愛されている曲のひとつです。
ブランデンブルク協奏曲は弦楽器、木管楽器、金管楽器、鍵盤楽器など、さまざまな楽器のために作曲されています。
各協奏曲は3楽章からなり、楽章は伝統的な「速い-遅い-速い」のパターンで並んでいます。
協奏曲は第1番のコンチェルティーノ(独奏)とリピエーノ(合奏)というシンプルなものから、第4番の4部構成、第5番の7部構成など、さまざまな音の基本的な組み合わせ方を備えています。
第1協奏曲はこの6曲の中で最も有名で、コンチェルト・グロッソの形式を最もよく表している曲のひとつとされることが多く、冒頭はフランス風序曲でゆっくりとした序奏と活発なフーガの部分が見られます。第2楽章は牧歌的な魅力に満ちた美しいシシリーノ。第3楽章は生き生きとしたジーグで、コントラプンタルの音の組み合わせ方がソリストを際立たせています。
第2、3、4協奏曲はいずれもコンチェルティーノ(独奏)とリピエーノ(合奏)の音の基本的な組み合わせ方が特徴的ですが、第3協奏曲がこの3曲の中で最も充実しています。
第5番は5人のソリストによる7部構成、より大きなリピエーノ、そしてコンティヌオ(通奏低音)のラインが特徴的で、このセットの中で最も印象的な作品です。
第6番はバッハの時代には珍しくチェンバロのソロが含まれているのが特徴です。
ブランデンブルク協奏曲はバロック時代に最も愛された作品であり、その影響は多くの後世の作曲家たちの音楽にも見られます。
この協奏曲は世界の主要なオーケストラやアンサンブルによって演奏・録音されており、クラシック音楽のレパートリーの定番であり続けています。
この曲がバロック音楽での代表的な存在となり、現在でも多くの人達に感動を与えていることはバッハが偉大な才能を持っていた何よりの証です。
【バッハ:ブランデンブルク協奏曲】バッハを代表する器楽曲!ブランデンブルク協奏曲の特徴と魅力を解説!協奏曲とは?古楽器とは?
J.S.バッハの名曲10 平均律クラヴィーア曲集第1巻 ハ長調 BWV846
The Well-Tempered Clavier, Book 1, BWV 846
平均律クラヴィーア曲集BWV846は、J.S.バッハが作曲した長短全24調の前奏曲とフーガの2組の作品です。
鍵盤楽曲で『平均律クラヴィーア曲集』の第1巻に収録されています。
音楽を熱心に学ぼうとする若者たちと音楽の学問に熟練した人達にとっての娯楽になるようにバッハは「長調と短調の全24調による前奏曲とフーガ」の本を書いています。
この曲には多くの学びと音楽の楽しみが凝縮されています。
【バッハ:平均律クラヴィーア曲集】バイブルと呼ばれるバッハの傑作の魅力とは?!そのすごさと面白さを解説!
選ぶの難しいというか、個人レベルで選択するのは完全に好みでしかないですね。。。
素晴らしい曲が多すぎて困りまくりました。
バッハが音楽の父と称される意味が分かります。
色んな楽曲で名作・名曲を非常に多く作出していますので、クラシックだけではなく、様々な音楽に通ずる基礎も築いた音楽界の巨匠です。
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