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フリッツ・クライスラーの名盤・名演

フリッツ・クライスラー
wikipedia画像より

フリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler 1875~1962年)は、オーストリア生まれのアメリカ人のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニスト、作曲家です。

史上最も偉大なヴァイオリニストの一人とされています。

クライスラーは、そのキャリアを通じてエレガントな演奏スタイルと表現力豊かな解釈で知られていました。
また、20世紀初頭に大流行した作曲家としても有名で、クライスラーの作品には、「愛の喜び Liebesfreud」「愛の悲しみ Liebesleid」「美しきロスマリン Schön Rosmarin」を含むヴァイオリンとピアノのための作品や、弦楽四重奏のための様々な作品があり、他にもオーケストラのための作品も数曲書いています。

クライスラーは20世紀のヴァイオリン演奏に大きな影響を与え、彼の作曲した曲は今日でも広く演奏されています。


レコーディングも盛んで、彼の録音はクラシック音楽愛好家の間で今も人気があり、古い音楽の保存にも力を入れて、タルティーニ、ヴィヴァルディヘンデルといった作曲家の作品を最初に録音しました。

19世紀から20世紀初頭にかけて最高のヴァイオリニストの1人に数えられる巨匠ですが、どのような生涯を過ごし、どのような名曲を遺したのでしょうか。

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フリッツ・クライスラーの生涯

フリッツ・クライスラーは、音楽の都ウィーンで父で医師のサミュエル クライスラーと母アンナとの間に生まれました。

ユダヤ系オーストリア人として生まれたものの、キリスト教の洗礼を受けたそうです。

7歳から本格的な音楽教育を受け、ウィーン音楽院で作曲をアントン・ブルックナー、ヴァイオリン演奏はヤコブ・ドント、ヨーゼフ・ヘルメスベルガー Jr.に師事することとなり、10歳にして主席で卒業し、さらにパリ高等音楽院に進みます。

単に著名な音楽教育機関で学んだだけでなく、パリ高等音楽院では若干12歳にして「プレミアプリ」金メダルの学位を取得して卒業するという快挙を成し遂げました。

この実績をもとに、フリッツ・クライスラーは、13歳となる1888年にアメリカのニューヨークにあるスタインウェイホール(ピアノで著名なスタインウェイ&サンズのコンサートホール)でデビューを果たしました。

このコンサートを皮切りに米国ツアーを実施したそうです。

ただ、これだけの実績をもってしても、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団への入団は厳しく、応募したものの「初見演奏が不得手」「音楽的に粗野である」という理由で不合格となってしまい、採用には至りませんでした。

しかし、1899年にヴァイオリンの世界へ復帰し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とコンサートを行うに至ります。

ここから1901年に再びアメリカで演奏ツアーを開始し、そこで生涯の伴侶となるハリエット・リースと出会い、クライスラーにとって大きな支えを得ることになりました。

その後、1914年に第一次世界大戦がはじまり、オーストリア軍の兵士として従軍することになりますが、戦争での負傷によって名誉除隊することになりました。その後アメリカへ移住して演奏家としての活動も再開しますが、当時オーストリアはアメリカの敵国だったので、音楽活動も軌道に乗らない不遇の生活を送ります。

そのため、大戦の終結後にヨーロッパの音楽界へ復帰し、ツアーを開始します。
アジアへも訪れ1923年には来日もしました。

その後、1924年から1934年までベルリンを拠点しての活動を行っていましたが、ナチスの迫害を恐れてフランスと転居することにしました。

ベルリンではセルゲイ・ラフマニノフと親交を深めて、多くの録音を残しています。

ナチスがフランスまで迫ってくると、フリッツ・クライスラーはアメリカへの永住を決意しました。

1941年、アメリカへわたって間もなく、ニューヨークで道路を横断中にトラックにはねられ、頭蓋骨を骨折し、1週間以上昏睡状態に陥るなど、不幸にも見舞われましたが、1943年にはアメリカ国籍を取得します。

ここからアメリカ人ヴァイオリニストとして重傷から復帰し、多くのリサイタルをこなしていきます。

ただ、その活動も1950年で終止符を打ち、事故による視力障害や突発的な記憶喪失などの後遺症によって引退に至りました。

引退後も若い演奏家の支援をするなど音楽への貢献をしていましたが、1962年、ニューヨークで心臓疾患のため死去し、ブロンクスのウッドローン墓地に埋葬されました。

甘い音色と表現力豊かな演奏で多くの人々を魅了した名ヴァイオリニストでした。

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フリッツ・クライスラーの名曲や名盤

20世紀中盤まで活躍したフリッツ・クライスラーは、自身でも多くの名盤をリリースしていますが、他のヴァイオリニストにも弾かれている曲も多くあります。

今回紹介するのは、自身や他のヴァイオリニストが収録した3タイトルです。

・クライスラー:自作自演集

クライスラー自作自演集は、”Red Seal” の愛称で親しまれた赤盤を復刻させたシリーズです。

フリッツ・クライスラー自らによる1920年代後半のセッションでの録音が収録されています。

体力の充実した40代にフリッツ・クライスラーの手によって演奏される楽曲の数々は艶のある音色や自在なボウイングを感じられる一枚に仕上がっています。

・愛の喜び&愛の悲しみ~クライスラー自作自演集(日本独自企画盤)

表題の愛の喜びは、ドラマ版「のだめカンタービレ」挿入曲としても使用された親しみのある曲ですが、作曲した本人が演奏する同曲は、また違った印象を与えてくれるでしょう。

同タイトルの一部楽曲に加えて1942年録音のオーケストラ伴奏による6曲を加え、日本で独自企画した名盤です。

1920~1940年代のフリッツ・クライスラー自らが収録した楽曲ばかりですが、BSCD2カッティングによって音楽をより楽しめる明晰な音質になっているのが特徴です。

収録曲の中国の太鼓は、伴奏のピアノが太鼓を模したユニークな楽曲で、サンフランシスコのチャイナタウンで聴いた中国の音楽に着想を得た作品として知られています。

・クライスラー:ヴァイオリン名曲集≪クラシック・マスターズ≫ イツァーク・パールマン

20世紀後半における最も偉大なヴァイオリニストの一人に数えられるイツァーク・パールマンがフリッツ・クライスラーの作品に挑戦した名盤です。

愛の喜び、愛の悲しみ、そして美しきロスマリンで構成される3つの古いウィーンの舞曲も収録されています。

この3曲をフリッツ・クライスラー自身のコンサートでのアンコール曲として頻繁に演奏していたことから、本人の思い入れの深い楽曲です。

ちなみに美しきロスマリンは、バレエのレッスンでも用いられることが多い曲なので、バレエの経験がある方にとっては、なじみ深い曲といえるでしょう。

これら以外にも多くの楽曲や素晴らしいディスクがリリースされていますので、自分でもぜひ探してみてください。

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クライスラーの動画

クライスラー 美しきロスマリン

フリッツ・クライスラーの最も人気のある曲の1つは、「美しきロスマリン」です。

1910年に書かれたこの曲は、ウィーンのワルツのスタイルになっています。
ノスタルジーと憧れを感じさせる、叙情的でロマンティックな曲です。この曲は、クライスラーのレパートリーの中でも、よりエネルギッシュで明るい曲の箔付けとしてよく使われます。

この曲は美しい旋律と優しい伴奏が特徴の、ゆったりと穏やかで平和な曲であり、聴く人に微笑みをもたらすことでしょう。
クライスラーのこの曲の演奏は、魂のこもった叙情的な解釈で知られており、多くの著名なヴァイオリニストによって録音され、ヴァイオリンのレパートリーの古典とされています。

Fritz Kreisler _"Schön Rosmarin" 美しきロスマリン (Kreisler)

クライスラー ファリャ:スペイン舞曲

フリッツ・クライスラーによるファリャの「スペイン舞曲」の演奏は、クライスラーの伝説的な音楽性を見事に表現しています。

彼の演奏は、情熱的な感情、技術的な正確さ、そして音楽に対する深い理解が混在しており、音楽の情熱とエネルギー、強烈なフィーリングとともに微妙なニュアンスを引き出すことができました。

クライスラーは、激しいヴィルトゥオジティと繊細なリリシズムの組み合わせで、この作品のエキゾチシズムとスペインの香りを見事に表現しています。

この作品のクライスラーの解釈は、ファリャの「スペイン舞曲」のベスト盤の一つとして聴く喜びを与えてくれるものであり、彼の最高傑作のひとつとされている録音です。

Fritz Kreisler – de Falla: Danza Espanola (La Vida Breve)

クライスラー ブラームス:ヴァイオリン協奏曲OP.77 1st Mvt (1927) 再復刻

ヴァイオリン協奏曲Op.77は、著名な作曲家ヨハネス・ブラームが1878年に作曲した3楽章の作品で、ヴァイオリンのレパートリーの中で最も偉大な作品のひとつとされており、ロマン派時代の最も重要な作品のひとつでもあります。この協奏曲は、1879年にライプツィヒで、偉大なヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムをソリストに迎えて初演されました。

この曲は偉大なヴァイオリニスト、フリッツ・クライスラーによって演奏されたことで有名です。
クライスラーの解釈は広く賞賛され、その後のこの曲のすべての演奏の基準となっており、特にその表現力と情熱的な解釈は高く評価されました。

第1楽章の演奏は、クラシック音楽界で最も偉大な録音のひとつとされています。
クライスラーによるヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77の演奏は、この作品の最も重要な録音のひとつとされています。が、クライスラーは、「クライスラー・カデンツァ」と呼ばれる自作のカデンツァを、この作品の演奏によく使用しました。
彼の解釈は、その感情的な強さ、技術的な輝き、そして美しいフレージングで有名です。

Fritz Kreisler – Brahms : Violin Concerto Op.77 – 1st Mvt (1927) 再復刻

クライスラー 愛の喜び 自作自演

「愛の喜び」は、1900年代初頭にフリッツ・クライスラーによって作曲された人気のヴァイオリン曲です。

ユニークで印象的なメロディーを持つ情熱的で情緒的な曲で、生き生きとした高揚感のある曲です。
この曲は、クライスラーの名人芸と楽器の達人ぶりが発揮されており、イツァーク・パールマン、ユーディ・メニューイン、アンネ・ゾフィー・ムターなど、多くの偉大なヴァイオリニストによって録音されている美しくロマンチックな曲です。

この曲は、ゆったりとした叙情的な解釈から明るく活発な解釈まで、さまざまなテンポやスタイルで演奏されることが多く、音楽家と聴衆の両方が楽しめるヴァイオリンのために書いた傑作の好例であり、ヴァイオリン独奏曲として演奏されることが多い曲です。

愛の喜び(クライスラー)自作自演

クライスラー 愛の悲しみ

クライスラーが演奏する愛の悲しみは、愛のダークサイドと、それに伴う失恋の痛みを探求するものです。これらの『哀しみ』は、荒波を乗り越えた関係や、困難にもかかわらず関係を維持しようとする闘いを物語っています。

『哀しみ』は、伝統的なバラードからアップビートなダンスナンバーまで、さまざまな方法で演奏されます。多くの曲はメランコリックな音楽にのせて、リスナーは表現されている感情に完全に浸ることができ、歌詞は、感情移入しやすい後悔や憧れ、悲しみなどをテーマにしたものが多くあります。

また『哀しみ』は、悲しみや喪失感に直面しても回復する力や、希望という深いテーマを探求しており、クライスラーは『哀しみ』を通して、人は痛みや心痛の中でも喜びや愛を見出すことができるという考えを表現することができたのではないでしょうか。

クライスラーは、『哀しみ』を通して、愛と失恋の感情を力強くとらえ、人間関係の苦悩と喜びのサウンドトラックを提供することで、世界中のリスナーの心に語りかけるパワフルで感動的な作品を作り上げることができたのです。

Fritz Kreisler – Liebesleid 愛の悲しみ (Kreisler) – 1938

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