ナタン・ミルシテイン
ナタン・ミルシテイン(Nathan Milstein 1903-1992)はロシア(現・ウクライナ)のオデーサ生まれのヴァイオリニストです。
フランコ・ベルギー楽派の優美な演奏スタイルから、ヴァイオリンの貴公子とも呼ばれ、アメリカで活躍しました。
美しく流れるようなレガート奏法は、ミルシテインの特徴とも言えます。
控え目でありながら鮮やかなテクニックと表現力により、気品とも言えるミルシテインの独特な演奏を感じることができます。
その独特な気品あふれる音色は現在でも高く評価されており、多くの若きヴァイオリニストにとって尊敬の的であり、憧れでもあります。
20世紀最高のヴァイオリニストとしても数えられるアーティストの一人です。
ナタン・ミルシテインの生涯
ナタン・ミルシテインは1903年にロシア帝国のオデーサで7人兄弟の4番目として生まれました。
多くの巨匠は音楽一家であったり家が裕福であったりしますが、ミルシテインは中産階級のユダヤ系家庭で生まれです。教育熱心だった家庭であったため5歳でヴァイオリンを始めると、ミルシテインの希望もあり7歳にしてヴァイオリン教育者として著名だったピョートル・ストリャルスキーに師事することになります。
11歳になる頃には実力が認められ、レオポルド アウアーからサンクトペテルブルク音楽院に招かれましたが、14歳になる頃にはロシア革命が起こり、師匠とアウアーと別れてしまいます。
キーウに戻ったミルシテインは、ウラジミール ホロヴィッツとピアニストの妹レジーナに出会って意気投合しソ連中を演奏旅行することになり、その後も度々共演することが増えて1925年には西ヨーロッパの演奏旅行も同行するようになります。
そして、ウジェーヌ・イザイにも師事し、実力を養っていきました。
1929年に渡米し、フィラデルフィア管弦楽団に所属しながらさらに技術を磨いていきました。
1942年にはニューヨークに定住してアメリカ市民になり、その後ロンドンとパリにも拠点を構えつつヨーロッパ中を演奏して回りました。
楽器にもかなりのこだわりを持っており、1945年に1716年製のストラディバリウス「ゴールドマン」を購入して、それを片手に続けていたようです。
1948年には録音にも積極的に参加し、コロンビアが新たに導入した長時間再生の12インチ33rpm ビニールレコードの最初の録音タイトルになっています。
このように演奏会の傍らレコーディングにも積極的であったことから全米のみならずヨーロッパでも高い知名度を持つヴァイオリニストとなりました。
その実績から1968年にフランスからレジオンドヌール勲章を授与され、1975年にはバッハのソナタとパルティータの録音でグラミー賞を受賞するなど、欧米で高い評価を得ました。
高齢となったもののミルシテインは精力的に演奏を続け、1986年にストックホルムでリサイタルを挙行し多彩さも82歳とは思えない技術で多くの人々を魅了しましたが、手を骨折したことでそれが最後の演奏となり、演奏家としてのキャリアを引退しました。
その後ミルシテインは、回顧録「ロシアから西へ」を出版し、アメリカで高い評価を得ます。
個々には自身から見たロシアの著名な指揮者について解説しており、現在も貴重な資料になっています。
このような活動をつづけたミルシテインは、1992年にロンドンで88歳の生涯を閉じました。
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對馬佳祐氏によるミルシテイン解説動画
ナタン・ミルシテインの名盤・名演
ナタン・ミルシテインの名盤・名演を紹介します。
・バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
バッハの無伴奏ヴァイオリン作品の解釈で知られたミルシテインの、1975年に収録された名盤です。
ストラディバリウスを駆るミルシテインの気品の高い演奏は、聞いているとその世界観に引き込まれるような印象を受けます。
切れのある演奏で、ヴァイオリンの心得のある方なら一度は聞いておきたい一枚といえるでしょう。
・メンデルスゾーン&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
1972年に収録されたロマン派のヴァイオリン協奏曲の傑作2曲を収めた一枚です。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演が素晴らしい収録です。
メンデルスゾーンの哀愁を帯びた曲調やチャイコフスキーのロマンティックなメロディーが印象的な一枚になっています。
ウィーンフィルがミルシテインの魅力を引き出し、ミルシテインがウィーンフィルの魅力を引き出すような相互関係を感じるような名盤といえるでしょう。
・Complete.. -Box Set-
円熟期に録音した総てのドイツ・グラモフォン(DG)レーベルをまとめた名盤です。
バッハの無伴奏とピアノ伴奏の小品集を中心に構成されているのが特徴で、珍しいアンコール用の曲も収録されています。
5枚のディスクには、1枚目がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35(1792年)、2枚目がブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77※ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演(1974年)、3枚目と4枚目がバッハの無伴奏ヴァイオリン集で構成されているのが特徴です。
そして、5枚目は、先ほど紹介したアンコール用の小品が収められており、これらを聞くことでミルシテインの演奏会にいるような充実した時間を過ごすことができるでしょう。
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ナタン・ミルシテインの芸術
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ミルシテインの名演動画
パガニーニアーナ
パガニーニアーナは、ヴァイオリン独奏のための変奏曲で、ニコロ・パガニーニの人気曲「24のカプリース」の主題による24の変奏曲のセットです。
1930年代前半に伝説のヴァイオリニスト、ナタン・ミルシテインによって24のカプリースを凝縮したこのパガニーニアーナを演奏しました。ミルシテインの演奏は、パガニーニの音楽の精神をとらえつつ、彼独自のタッチやスタイルを加えています。
ミルシテインは情熱的でありながら気品のある演奏で知られており、パガニーニ変奏曲も例外ではありませんでした。
ミルシテインのこの曲の解釈は最高傑作のひとつとされ、彼の名人芸と圧倒的な音楽性を証明しています。
ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61を演奏したナタン・ミルシテインの演奏は、この作品の最もパワフルで決定的な演奏のひとつとされています。
気品があり、力強く情熱的な演奏と、作曲家の意図や感情を高い表現力で伝える能力で有名です。
ミルシテインの演奏する協奏曲は、特に外楽章において勢いのある速いパッセージが特徴的ですが、その一方で絶大な落ち着きと統制が取れています。
ミルシテインの解釈は非常にエネルギッシュで叙情的であり、音楽の様々なニュアンスやディテールを強調することができます。
また、彼の演奏は明瞭さと正確さ、そしてベートーヴェンの文章の美しさを引き出す能力も際立っています。
これらの要素が相まって、彼の演奏はこの古典的な作品を時代を超えた名演としているのです。
J.S. バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV1004 シャコンヌ
ミルシテインが演奏したシャコンヌは、この曲の最も有名な演奏の一つと言えます。
その卓越した技巧と激しい感情表現が特徴で、幅広いダイナミクスと音色を組み合わせ、魅惑的で感情的な演奏を作り出しています。
シャコンヌはヨハン・セバスチャン・バッハが1720年代に作曲したもので、ミルシテインの演奏によりこの曲の時代を超えた美しさを引き出しています。
ミルシテインの解釈はほとんど即興的ともいえるユニークなもので、音楽の本質をとらえ、新しい生命を吹き込んでいます。
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64は、19世紀で最も愛された協奏曲の一つです。1844年に書かれたこの曲は、アレグロ・モルト・アパッショナート、アンダンテ、アレグロ・ノン・トロッポ-アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェの3楽章で構成されています。
この曲は様々な技巧的効果を特徴とする非常にヴィルトゥオーゾ的な曲であり、長年にわたり著名なヴァイオリニストによって演奏されてきました。
特にナタン・ミルスタインの演奏は有名です。
彼の協奏曲の演奏は力強い音と抒情的なタッチが特徴で、その演奏の正確さと技術的な正確さは感情的で表現豊かな音楽の解釈によって補完されています。
ミルシテインの演奏は、この協奏曲の最も決定的な録音のひとつと広く認められています。
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